この人は英文学者というよりは翻訳家。しかも舞台側で育った翻訳家。
蜷川幸雄から「ぼくのシェイクスピアは全部松岡さんの翻訳でいくからね」と言われた人。
この人を得たのは演劇界にとって幸福なことだったのではないだろうか。
現場に立ち会い、役者の意見も取り入れ、言いやすいように、意味の取りやすいように
常に訳を彫琢する。多くの翻訳家がやりたかったことかもしれないけれど、
やれる人はこの人しかいなかった。
英文学の側からじゃないので、こんなタイトルでもそんなに難しいことは
書かれてません。聞き手と語り手のインタビューが基になった内容だから、
むしろちょうどいい感じの深さ(というか浅さ)で、相当に読みやすくて面白い。
聞き手(小森収という人)の腕もいい。
一番面白かったのは、役者の読みによって翻訳の精度が上がったという話。
松たか子のオフィーリア、蒼井優のデズデモーナ、唐沢寿明の演技の工夫、
テレビで見たことのある舞台の話もあったから親近感を抱いた。
役者の凄みを感じますね。
松岡さん、エッセイを4、5冊読んでこれで終わりだけれど、だいたい全部面白かった。
1冊ほど英文学寄りでちょっとこめんどくさいものがあったけど。
これが2011年発行の本で今から15年前。他の本もそうだが、
全体的に40代くらいのイメージで読んでた。そしたら今年、御年84歳だそうですね。
15年前だと70歳くらい。いや、文章が若いわ。
ちくま文庫の33巻「終わりよければすべてよし」が出たのは2021年になってるんですが、
ここまでかかったんでしょうか。蜷川もこれはやってないのかなあ。
御年80歳……。シェイクスピア全訳。訳者の凄みもありますねえ。
わたしはシェイクスピア、「真夏の夜の夢」は中学の時にやったし、
「ハムレット」は好きで読み、「ロミオとジュリエット」はまあさすがに読み、
筑摩の世界文学全集でたしか4巻分……のシェイクスピアを読んだ記憶はあるんだけど、
世界文学全集では1巻、世界古典文学全集では6巻なんだよなあ。
一応読むだけはたっぷり読んだ気がするから、6巻読んだのかなあ。
でも単に読んだだけなので、全然覚えてない。
「リア王」「オセロ」「マクベス」「ヴェニスの商人」あたりは死ぬほどあらすじ
読んでるから、流れはだいたいわかっている気がするけど、実際読んだ気がしない。
「ヴェニスの商人」は映画を見たね。
「マクベス」がなんか気になるんだよなあ。読んでみようか。それこそ松岡訳で。
松岡訳を33巻、ちくま文庫で読むという手もあるけど、さすがに33巻……。
他に課題図書が千や二千あるなかで33巻……。
でもシェイクスピアはきっと、読んでるだけでは十全じゃないんだろうね。
やはり舞台を見ないと。舞台を見てこそわかるものなんだろう。
この本は面白い。
でも念のためにお断りしておくと、シェイクスピアを1作も読んだことない人が、
入門として読む内容ではありません。
全作読んでなくても全然差し支えはないが、なんぼかは読んでないとさすがに
面白みは少ないと思います。

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