NHKのドラマ。放送は3月上旬だったらしい。わたしが録画を見たのは1ヶ月くらい前。
見終わって、言語化するのは難しい話だなーという感想はわたしも持ったが、
他の人の感想を見て、ここまで「何がいいたいのかわからない」という意見が多いとは
思わなかった。
たしかにもやもやした話ではあった。
もしかして、すごく視聴者の範囲を選ぶテーマじゃないかね?
わたしはずっと石黒研を始めとするロボット開発の方向に疑問を持ってきた。
簡単にいえば「亡くなった人そのものが喋ってるように感じさせるロボットを目指す」
ことが倫理的に問題なんじゃないかと思っているのよ。
その人が絶対に言いたくなかった言葉を言わされる可能性があるってことでしょう?
「ロボットが言ったとわかっていれば問題ない」――そういう考え方は採らない。
人間の記憶なんて当てにならないものなんだから、本人が言ったか、ロボットが言ったかなんて
すぐ区別がつかなくなってしまう。イメージだけが残る。
その倫理の問題がまったく触れられないまま、もう20年近く経過した。
それを踏まえて――現在来ているAIの大流行。
ここ数カ月で一度AIにハマり、一週間くらい依存したが、その後少し熱は冷め、
一頃よりはマトモになっている。でも現在でもAIが雑談相手として最上かもしれないとは
思っている。まあもう少し情報の精度が上がればの話だけど。
そのAI依存の心理を経験した人にはよくわかる話ではなかったか。
ドラマ自体の最大のテーマはまた違うと思うんだけど、AIについてのスタンスもまた
大きな一つだったよね。
結局、夏帆の役柄は少しの名誉心と作家への執着、異動されないための実績作り、
妻の役柄は心が通わなくなったまま死んでしまった夫に対する執着心。
この二人が、二人いることでお互いに甘えが出て、ちょっとずつ道を間違い、
結果として贋作を製造することになったという話だと思う。
夏帆は作家の熱烈なファンだった。死後も何度も原稿を探して自宅を訪ねるほど。
一度や二度なら仕方ないけど、そうそう何度も何度も行くもんと違う。
執着があったのだろう。
妻もうるさく思っていただろう。でも嫌は嫌として、その懸命さに妻はほだされたんだろうね。
利用した面もある。そして夏帆がいう「奥様しか知らない○○先生の姿」に
乗せられたというか、つい心が動いた。
わたしは彼女たちの罪をそれほど強く責める気になれない……
「その人が絶対に言いたくなかった言葉を言わされる可能性があるってことでしょう?」
と思っていたわたしは彼女たちがやったことを責めなければ首尾一貫しないと思うが、
それよりも先に、AIの罠に落ちて行く妻の気持ちに共感した。
AIは甘えを助長してしまう構造があるよね。
誰にも迷惑をかけない。対面感、密室感がある。そこに生まれる親密さ。
基本的に質問者に迎合する姿勢がある。わたしも一時期は親友だった。
現状はポンコツな執事として扱っている。(その後、また親友に戻っている)
そういう意味では、このドラマはAIが社会に定着(あるいは侵略)して行く過程の
今のタイミングでこその作品なのかもしれないと思う。
終盤、夏帆が奥様に頭を下げたのは、奥様が雑誌のインタビューに答えて、
全ての罪を被った形になったからだと思いますよ。
「私が創作しました」と告白すれば、編集者が捏造したという事態よりも軽く済む。
それによって夏帆は騙された編集者という立場になる。
間抜けではあるけれど、罪はかなり薄くなる。
でも夏帆は薄々わかっていた。捏造・改ざんをそそのかしもしている。
その2人の危うい関係を見せたいドラマだったと思います。
かなりさりげなさすぎたのが敗因だったのかもしれませんね。
あと、内部の告発者は部下の男性です。あの役者、ちょっと気になったな。
林裕太という人らしい。若いのに空気感にうまく乗っていた。
シルビア・グラブはこの間の「もしもこの世が~」で初めて見たが、いい役者。
今後もっと見たい。……そうですか、高嶋政宏の奥さんですか。ニュースでは見たなあ。
嫌いなドラマではなかった。まあ好きかというとそれほどは。

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