なかなかの良作。
とにかく重厚でした。ストーリーもしっかりしていた。
絵作りもすごく力が入っていたし、いい加減なところはほぼ一つもない。
が、重厚で良作だから好きかというと、そんなことはないんだなあ。
まあわたしは根本的に、重厚な作品はそんなに好みじゃないのよね。
でも良作でした。それは間違いない。
わたしはストーリーにものすご~~~~くうるさいタイプだが、
このくらいしっかり作ってあれば文句言うところはありません。……いやあるけど。
それは後で。まー自分でも重箱の隅だと思うから。
絵もいいね。しかもすっきりした「線」の構図にこだわってると感じた。
これはロケハンをがんばりましたねええええ。
アイスランドとかモロッコとかスコットランドとか。5、6ヶ所ユニットがあった気がする。
何もない砂浜。岩場。岩山。これ大変だ。
海での撮影はどうやったんでしょうねえ?
全部を海でやったわけではないだろうが、どのくらいの、どの部分を海で撮ったんだろう。
まあセットで撮ったとしても、役者もスタッフも大変なシーンばかりだったろうが。
イタケは小さな島。そこの領主だから、オデュッセウスはほぼ王様じゃないと思う。
だが、実際のイタケ島とは乖離があるとしても、イタケのお城の見上げる感じはすごく
好きだった。あそこはミケーネ遺跡のイメージがとても重なる。
あの岩山の雰囲気。昔見たミケーネ遺跡。
いい作品だということを再度言った上で、気になるところに言及しましょう。
わたしは冒頭の「木馬」に強烈な違和感が。
まあそれは、今まで何度も見たトロイア戦争のイメージイラストの罪?なのかもしれないが、
ああはならんやろ。という気がしてしょうがない。
材料の木材は、そんなに豊富には手に入らなかったんじゃないかなあ。
海側に布陣したギリシャ側。船を解体した板のようなものしか手に入らなかったんじゃ。
ということは、あんなに彫刻的な木馬なんて作れなかったのでは。
たしか木馬は、あまりにも大きすぎて城壁?城門?を壊さなければトロイ城内に
引き入れられなかったはずなのよね。そこを壊して入れる、だから防御力も下がる、
ということで納得になるのだが、今回は横に引かれて城門も壊れてないから納得感が薄い。
しかも、縦にしたり横にしたり引っ張っていくと、さすがに中の人の気配は伝わるだろうし、
人間は飲まず食わずでゴロンゴロンと転がされて、骨折しまくりじゃないだろうか。
あとはお約束、ヘレネとクリュタイムネストラの、二役はいいとして、
人種的なキャスティングね。
わたしはそもそも人種的に無理のあるキャスティングは嫌いである――
だって日本でいえば、戦国時代の話で、お市の方を黒人女優が演じるようなもんですよ。
この場合、日本人俳優以外でやったら誰だろうと違和感があるでしょう。
それならば、当時のギリシャを白人俳優が演じるのはどうなのかという意見も
あるかもしれない。それはそう。
でも作品世界の中でヘレネをギリシャ世界の人として作っているのだから、
そこにアフリカ系が入ってくるのは強烈なノイズになる。ギリシャ世界を白人種で描く
世界観なら、それは統一すべき。
そして、これは論点がまた違う話にはなるが、多様性に配慮したキャスティングにするわりに、黄色人種には全然配慮がないよね。今回だって東南アジア、東アジア人俳優は
ほぼいないでしょう?多様性多様性というなら、なんでまとめて面倒みないのか。
わたしはなんでもアジア系を入れればいいと言っているのではなく、
黒人だけがフォーカスされている現状がおかしいと思う。
人種がノイズにならない作品には積極的に多人種をキャスティングするのはいい。
でも原作ありや歴史的な作品には、その世界観は守られるべきではないかといいたい。
あと、アテナの扱いが納得出来なくてなー。
最初出て来た時は、まさかあれがアテナだとは思わなかったよ。
だってあの雰囲気では単なる村娘じゃないですか……。
女神がふと傍らに出てくるという表現自体はいいと思う。
でも神なんだから神々しさがあるべきだった。
トロイで殺された娘っ子ですよね?なぜそれがなぜアテナとして出てくるのか疑問。
終盤のオデュッセウスの悔恨は、それをあまりに饒舌に語り始めると、
そもそもトロイ戦争全否定というか、それを言っちゃあおしまいよ、にならないか。
たしかに寝取られ王の復讐に全ギリシアが連れていかれるのはヤダ、という見方も
あった気がする。それがホメロスの原作か、関連本の著者の意見かは忘れたけど。
あ、アキレスが女装で逃げたエピソードがあるんだから、原作にもあったはずだな。
とはいえ、あんな悔恨はあまりに現代的だよね。
さらりと語れば良かったのに、お気持ち表明が長すぎた。あそこでトロイの滅亡を
二度目に映すのが効果的だったとは思えない。それさっき見た。と言いたくなった。
そういう意味でいえば、アクション部分が無駄に長かった感はあるんだよなあ。
木馬内部のシーンも長かったし、漂流・難破部分も何回もあって、長いところがあった。
トロイの落城1回目も長かったと思う。
ここの合計を4割減、まあ3割減くらいにしてくれれば良かったと思うなあ。
あとおっさんの数が多すぎる。これはしょうがないのか。むしろ最小限というべきか。
でもアガメムノーンの描き方がよくわからないよ。印象的な造型ではあったが、
あの造型にする意味あった?しかも甲冑を脱いだ一瞬の素顔はただの人。
無駄にダースベイダーにする必要があったか。
ダースベイダーが寝取られ夫、しかもあっさり殺されていいのか。
本当に重箱の隅だが、カリュブディスの大渦は小さかったと思うよ……。
鳴門の渦潮ですか?と思ったもの。
これはこだわってわざわざ実写で作ったらしいんだけど、ここはそうではなく、
視覚効果を使うべきではなかったか。前に「パイレーツオブカリビアン」で、
カリュプソが作った大渦がものすごかったから、そのイメージをひきずっていて
(まああれはあれでファンタジーすぎたとも言えるが)比べるとだいぶちゃち。
アン・ハサウェイは好きで、ペネロペで良かったけど、
でもいうたらわたしのイメージではペネロペはシャーリーズ・セロンがドストライクだった。
カリュプソがアン・ハサウェイでもありだった気がする。
トム・ホランドという役者とゼンデイヤという役者は夫婦なんだってね!
トム・ホランド、幼く見えるわー。わたしはこの人、この作品が初。
来年フレッド・アステアか!へー。
そういう意味ではマット・デイモンもほぼ初。「オーシャンズ11」「12」あたりは
見たような気がするけど、全く覚えてないもんね。
文句をつけた部分の方が多くなってしまったが、良作であるのは間違いない。
監督のクリストファー・ノーランは、わたしにとっては「バットマン ビギンズ」の人。
あれは面白かったなあ。続編はそうでもなかったが。
「テネット」はいつか見てみたい。
テレビで見ると全然価値が変わるから、これは映画館で見るのをおすすめする。

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