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◇ 藤森照信×山口晃「日本建築集中講義」

藤森さんの本はツブしている。
基本全部面白いのだが、興味深いという意味の面白いではなく、
可笑しいという意味の「面白い」のは久々。面白かったー!

わたしは知らなかったんだけど、山口晃という人は画家。
検索してみたら、わたしこの人のクリアファイル持ってたわ。昔。
画材は洋画、様式は日本画の人らしい。メカっぽいものを描いたり、
鳥瞰図を描いたり、富士図を描いたり、日本画材で描いたり、
かなりユニークな活動をする人。

その人が藤森さんと何をしているかというと、一緒に面白そうな建築を見に行って
藤森さんは例によって説明をしている。
山口晃は聞いている、という立場だが、
面白いのは山口晃が描いた取材の裏話の4コマ漫画。

これが藤森さんの生態観察になっていて、あの人は何しろ「いい意味で野蛮人」
だから……いろいろ珍行動があるわけです。
まあ珍行動というほどではないかもしれないが、山口晃がどっちかというと
小心で繊細なタイプなので、藤森さんの一挙手一投足に驚いたりびくついたり……
かなりざざっと描いた4コマだけど、それが面白くて面白くて。

なつかしいなあ。その昔みんなが元気だった頃の路上観察学会の本も
そんな生態観察だった。すごく笑えたものだが。
赤瀬川さんも南伸坊もみんな珍行動の人だし。

近年は藤森さんも偉くなっちゃって、そんな珍行動をわたしたちに伝えてくれる
人はいなくなってしまった。この本でも描かれているんだけど、
取材に行くと相手方のお偉いさんたちが総出で出迎えるようになってて、
「いや、今日のはそういう取材じゃないから……」と藤森さんがいまいましがるという
(いまいましがっているのかはわからんが)場面が何回かあった。

山口晃は山口晃でそれなりの地位を築いている人のようで、
小心で繊細ながら弱弱しく藤森さんにツッコミを入れたりしている。
(そして正面から入れられないツッコミは4コマ漫画でやったりしている)
建築については当然藤森さんから教えを受ける立場だが、美術のことについては
知識も豊富なようだ。そういう人と話すのは藤森さんも楽しそうだよ。

行ったところは建築としては王道の、法隆寺とか待庵とか。日吉神社が少し
珍しかったか。絵描きは絵描きの、建築史家は建築史家の見方があったようだった。

毎回、最後に2人にアンケートをとるのね。割とシンプルな設問。

建物に関連して一番印象に残ったものは。
今回の取材を通じて印象に残ったものは。
ずばり、○○(取材対象)を一言で表すと。

2人の解答が野蛮人は野蛮人的に、小心者は小心者的に全然違うのでまた笑える。
愉しかった。

この取材は「なごみ」という雑誌でやった仕事らしいけど、
ついている編集者のポンコツぶりがけっこうやり玉にあがってて、そこも可笑しい。

山口晃は美味しいものを食べたい人であるらしいのに、編集者が全然食に興味がなく、
昼時になると目についたところにさっさと入ってしまうらしい。
美味しくなさそうな店でもかまわず。
こういうの、友人関係だったりしたら結局疎遠になっちゃうパターンだよね。

他に取材対象の定休日のチェックを忘れていたり、タクシーを呼んでなくて
2台は用意出来ないと断られたり、読んでて「ええ~」と思うことばかりだけど、
最終的にはその編集者たちのおっとりぶりにも慣れたらしく、
無事に13回の連載を終了したのでした。

これ、10年前くらい出版の本なのだけど、続編作ってくれないかなあ。
こういうのしばらくなくて淋しかったもん。
特に藤森さんもさすがに高齢で、いつ何時どうなるかわからないし。
こういう楽しい本を1冊でも多くわれわれに下さい。藤森さん。

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