常盤新平はずっと前にたしかアメリカのジャズについて書いた本を読んだ。
その時は「ふーん、カッコいいね(冷)」で終わった。
どうもかっこいいものアレルギーの気がある。
そういう意味で、いくら山の上ホテルについての本でも、
「どうせかっこいいんでしょ」と斜めに見ていた。期待してなかった。
そしたら、大変に人情的ないい本でした。
内容はだいたい山の上ホテルマンの聞き書き。
インタビュアーは当然常盤新平なんだ(ろう)けど、
インタビュイーの人がみんな人間的な厚みがある。物語を持っている。
物語を持っているということは、一所懸命生きているということだなあ。
そして彼らの中心には吉田俊男がいる。ホテルの創業者で社長。もう故人。
みんなが口を揃えていう。「この人だからついていった」と。
なかなか厳しい……というか、理不尽なところもあった人のようなんですよ。
働かせるだけ働かせるところがあって、読んでるこっちからすると
ブラック企業のように見えてしまう。
が、それでも慕われたのは、何かがあったんだろうなあ。
吉田俊男は自分のホテルの宣伝文を自分で書いていたそうです。
文芸誌に毎月(?)、長いコピーというか、超短いエッセイを載せていたらしい。
これを書くのに毎月呻吟していたとか。人間くさい。
カリスマと言われる人に会ってみたい。本当にそう思うかどうか。
山の上ホテルってどのくらい認知度がありますか?
文人御用達の宿ですよね。
エッセイなどにわりと出て来るので、わたしは昔から憧れがあるんですけど。
この本を読んで、ますます一度泊まってみたいなと思ったわー。
常盤新平もこのホテルを長年利用している人なんだそうだね。
総支配人(刊行当時)を勤め始めた頃から、知っているらしい。
長年のお得意さんだ。本を書くために取材したんだと思っていたが、
この人もこのホテルに愛着があるんだなあ。
心が温まる本でした。
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