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< 龍馬の遺言 >

年末頃にやったNHKBSのドラマ。
ドラマは見るのが面倒で、けっこうしばらく放っておく。録画したのをようやく2月半ばに見た。

超地味。そしてすごく面白い!

もう前半なんて、おっさんが和室で向き合っている場面がこれでもかと続く地味~な画なのだが、
これが全然退屈しない。驚くべき技。
おっさん嫌いのわたしが、あれだけおっさんてんこ盛りのドラマを飽きずに見てたんだから。
考えてみれば女性って皆無じゃない?ほんとに全くいなくない?
ええ~、びっくりだなあ。

冒頭、伊藤淳史が出て来た時に、地味なドラマになりそうな予感がし、
筒井道隆が出て来た時に確信した。
でも筒井道隆はけっこう好きで、久々に顔を見られて嬉しかったし、ちょっとわくわくしてきた。
静かに静かに進むドラマで、わたしは基本そういうドラマは邦画独特の辛気臭さだと感じて
あまり評価をしないのだが、これは静けさ、地味さの品の良さが際立っていた。

画柄がいちいちきれい。
春嶽が立って歩いた時の廊下は少し大づくりすぎて、筒井道隆が小粒に見えて残念だったが、
質素な明治16年の春嶽邸も、藩主時代の御殿の障壁画も、川べりのたばこや?も、
武家通りも……すごく美しい。作りこんだというよりはシンプルな美しさだが気持ちいい。
これってロケかね?セットだとお金かかりすぎですよね?

そして相変わらず、新井浩文は誰だかわからないのであった……。
こないだの「銀魂」でもそうだったのだが、この人の顏、ほんとに覚えられないわー。
見たことあるとすら思わない。見ながら「主役をするくらいだから、少なくとも見たことはある
俳優のはずだが」と思っていても思い当たらない。
1時間くらい経ってからようやく、あ、もしかして。と思う。
こういうのカメレオン型俳優っていうんですかね。カメレオン型の女優は何人か浮かぶが、
男性では目下この人だけかもしれない。

そして特筆したいのは、宇梶剛士の顏芸だ!もうびっくりした!
今まで、キャラクターとして面白みのある俳優だとは思っていたけど、
演技が達者だと思ったことは無かった気がする。それが今回の演技を見て、驚異的だと思った。
あそこんとこですよ、慶喜がとことん丸裸にされ、
「あの男がいれば違った道があったかもしれんが……」と述懐するのを聞いた時の表情。

顏の筋肉と目玉の動き方がすごかったよ。
1分くらいはカメラを動かさず、ずっと宇梶を撮っていたのではないか。
これは相当に見どころがないとできません。
役者本人がここまでの演技を考えたなら天才だし、演出で引き出されたものなら演出もまた天才。
VFX使ってませんよね?と思ったほど。なんていうのかなあ、歌舞伎の見栄を、
全身ではなく顔だけを使ってやり遂げたような。衝撃的でした。
今後、宇梶剛士といえばこれを思い出すだろうな。

戦国時代と幕末はいろんな小説・ドラマになっているから、何かと目にする機会は多いが、
特に幕末が好きというわけではないので、……正直細かい部分は自信ない。

龍馬に暗殺についてはいろいろ謎があると言われているが、何々説があるんだっけかね?
何だかを読んだ時に「謎といわれている龍馬暗殺は全然謎ではなく、一次資料も発見されているので
京都見廻組で決まり」という理由と結論が納得出来たので、わたしはそれでいいと思っているが。
この辺詳しい人はこのドラマをもっと楽しめたんだろうと思う。
途中、急転直下ミステリ仕立てになった時はわくわくしたもの。
まあ意外に早く、ミステリ風は終わってしまうんだけどね。

演出が繊細で良かったなあ。こういう良質な演出を抱えてるのなら、NHK!
「西郷どん!」のカスのような演出を何とかせんかい!
……と言おうとしたのだが、「薄桜記」の演出家かあ。

「薄桜記」はダメダメで視聴中止したドラマだった。というのを覚えてるくらいだから、
相当にダメダメだったんだと思います。
まああれは主に脚本が悪くて、演出の難は階段のモタモタくらいだったのかもしれないけど。
今回の演出のレベルは5年半の間に腕を磨いた結果だというのならいいのだが。

今回の龍馬像はかなり説得力があったと思います。
坂本龍馬は面白い人だとは思うけど、そんなにみんなが奉るほど偉い人かというのは
意識下で違和感を持っていて、今回それがけっこうすっきりした。
まあ詐欺師とまでは言わんでいいけれども、多分に舌先三寸の人だったんじゃないか。
お調子者の気味があり、しかし発想は豊か。

それまでそういう人は日本人にいなかった。……いなかったわけではないだろうけど、
そういうタイプが表に出てこられる社会ではなかった。
要はIT社長みたいなもんではないのか。発想と人脈で勝負する。
おそらく胡散臭さもあったと思う。
暗殺に、騙された恨みが混じっていたとしても驚かない。坂本竜馬暗殺の企図には
計算で出した結果だけではない、人間のどろどろした情念を感じる。

ところで。サッパリ名前が出てこないことでお察しでしょうが、わたしは
「龍馬最後の三十日」を見ていない。
やってたことさえ気づかなかった。地上波は番組表チェックしないからなあ。
「龍馬の遺言」があんなに面白かったんだから、その前段階も見たいじゃないですか。
まあNHKは使いまわしの玄人だから、いずれ再放送をするだろう。その時見よう。

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