大司教館付属博物館と礼拝堂。
博物館としては小さめだが、展示物を明るくすっきりと飾っているので気持ち良く見られる。
豪華な聖具や建築のレリーフ部分といったところが多かった気がする。
しかしここでの見どころは(付属礼拝堂は当然のこととして)間近で見られる聖母像のモザイク。
肘を曲げて両腕を広げ、掌を上に向けて祈るポーズのことをオランスというそうです。
便宜上、オランスの聖母。今、関連本をチェックしたところ、これは18世紀に破壊されてしまった
ウルシアーナ大聖堂という場所の後陣にあったものを展示しているらしい。
他の場所ではモザイクはたいてい壁の高い処にあり、細かい石一つ一つまで見分けられるほど
近くからはなかなか見られないので、目の前で鑑賞出来るここは貴重な場所。
オランスの聖母は、等身大くらいだったろうか。
トルチェッロ島やムラーノ島の聖母たちがまとっていた藍色の衣を、この聖母も身につけている。
至近距離から一歩一歩離れていくと、印象がそれにつれて変わっていくのが面白い。
至近距離では石は一個の石。
背景の金色の不揃いな並び方が人間らしくて可愛らしい。
それを並べた職人の、気負いのない効率的な手の動きが想像される。
そして離れるに従って石が“色”になっていく。色が線を生み、その線が衣のひだや
顔や手の陰影を形作る。物の姿が立ち現われる。
当然といえば当然なのだが、モザイクの面白みは絵画とは全く違うんだなあ、といたく納得。
聖母の足元に赤い花が咲いている。そのうちの一番左側のだけ形が崩れている。
……下手な人が担当したのか?時間がなかったのか?
単に移設の時に崩れたのかもしれないけど、お話が作れそうだね。
付属礼拝堂はかなり狭い。“司教のための”礼拝堂なんだろうから、一人用で十分ということか。
ここも天井のモザイクがかなり近いため、絵としてよく見ることが出来る。
メダイヨンが気になった。イエス・キリストを始め、聖人たちのバストショット。
これが……一体何を根拠に、といいたいほど弟子たちの顔貌が個性的。
パウロは面長の額の広いひげ面で、ヤコブは坊っちゃん刈りみたいな髪型で、
こういうマンガのキャラクターがどっかにいたよなー、と言いたい気がする。
ペトロは白髪の賢そうな風貌、アンドレアはベートーベンみたいなもじゃもじゃ頭。
他の絵画作品だって、実際の顔を知らない癖に描いているのだから、
モザイクが想像で聖人たちに個性を与えてもおかしなことは全くないのだが、
やはりモザイク=定型様式というイメージがあるんだろうな。
不思議な気がして、口を開けて聖人たちのメダイヨンばかり見ていた。
ネオニアーニ洗礼堂。
ここは個々のモザイクは見ていない。空間という意味でも、他に学校の生徒らしき集団が
いたこともあり、あまり味わってない。
モザイクばっかり見ているので、多少飽きている。という理由もあるな。
ただ、モザイク自体は見事なので被写体としては大いに食指が動く。
後で写真を見ると、これは相当に装飾的なデザイン。ぎこちなさがほとんどない。
饒舌な気のするモザイク。
絶対、時代はだいぶ下がるだろうと思ったのに、ネオニアーニ洗礼堂自体は
ガッラ・プラキディア廟とあまり変わらない5世紀前後の建設らしい。
それなのに内部のモザイクの印象の違いはどうしたことだ。
職人の腕の差ということになるんだろうか。ガッラ・プラキディア廟は、根本的には
何として作られたのか、というところから謎だそうだから、かけられた手間や費用も
色々変わってくるんだろうけどね。
もうモザイクを見過ぎて何がなんだかわからなくなっていることは否めないのだが、
ここは内部に入ると見覚えがある。ここも、ものの本でよく見るところだ。
いや、でもやっぱり実際見ると迫力があります。ほんと、モザイクは見てこそですね。
これはまた……と言って絶句。呆れる。ここもバジリカ式の長方形の聖堂で、
ここは、身廊と側廊を仕切るアーチ上部の壁のモザイクがすごい。
聖人と聖女が左右にずらりと並んでいる。片方24人?26人?
あまり描き分けはされていないとは言え、こんな50人分もモザイクで描く労力……。
それだけじゃないですからね。それとは別に聖人たちもいるし、玉座で天使を従えたイエス、
それと対になるマリア。東方三博士、キリストの生涯のモザイク。その他。
とにかく量に驚く。出来も相当にいいのだけれど、みているこっちが多少すれてきているせいか、
絵としての感銘は少なめ。
あ、でも東方三博士は良かったな。
これモザイクですか?と訊きたくなるような細かさ。絵じゃないよねえ?
配色の美しさ、人物デザインの巧みさ。これは他の部分とは相当雰囲気が違う感じがするので、
後世の追加だとわたしは感じる。
(ちなみにwikiの写真だと、聖女の行列も東方三博士も印象がだいぶ違う。
聖女の行進の正面から撮った写真を掲載しているのだろうが、実際の場所では
下からの視線を意識して作ってあるせいか、全身が細長いという印象はない。
むしろ若干ふくよか。
同様に、東方三博士の方ももっとがに股。その分動きが感じられる気がする。)
今から思えば、ここはオーディオガイドか何かで、日本語でがっつり説明を聞きたいところだ。
まあ日本語のオーディオガイドはないだろうけれども。
基本的にオーディオガイドの類は百害あって一利くらいしかないと思っているけれど、
じっくり見た後で聞くならなかなか有用かもしれない。
しかしなー。もっと体力つけて、気力を充実させて向かい合わないと駄目だ。
反省する。次回に備えてジョギングでも始めるか。
……いや、それは絶対無理。

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