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< ココ・アヴァン・シャネル >

好意的な意味で、まあまあ。

やはりオドレイ・トトゥは見ていて愉しい女優だ。表情を見ているだけで満足出来る。
だいたい、2時間の映画をほぼ登場人物5人だけで乗り切ったのだから、
役者たちはみんな良かったんだよ。

話は大したことない。シャネルが若くて、まだ成功する前の時期に特化して作った映画。
……これがなかなか見ていてツラかった。わたしは主人公が哀れだったり、
恥ずかしかったり、はらはらする立場だったりする話が苦手だ。

前半、設定的にシャネルがイタくてね。
貴族の男のところに呼ばれもしないのに押しかけていって、妙に強気で居座ったり、
そんな立場ゆえに貶められたり。(立場からすれば妥当な扱いだと思う)
映画の大部分がそういう自立前の話なので、正視出来ずに、
「もういいじゃん、一人でパリに行きなよ」と思っていた。

で、シャネルの伝記映画だとしたらここを飛ばしちゃいけないだろう、
社会的な成功の過程はほとんど描いてない。
監督の意図はわからないではないけど、この部分にけっこう興味を持っていたのでちょっと残念。
事業を始める、という決意からすぐに、成功した帽子店のシーンだからなあ。

役者をうっとり眺めて吉。

オドレイ・トトゥは、今回あまり笑わない役どころ。
ほとんどが、怒っているような、怪しんでいるような強い凝視で画面に映っている。
見ているこちらが睨まれているようで緊張する。その代り、笑ってくれるとほっとする。
この緊張感は最後まで崩れなかった。

パトロンその1のエティエンヌ・バルザン。
演じたブノワ・ポールブールドという役者が良かったねえ。
役柄的にはもう少し若い役者の方が合ってた気がするが、
いい加減で陽気で優しくて、ほんのちょっと誠実で、いい味だった。
これ、下手にやったらほんとに鼻もちならない役なんです。
でもこの役者がやって、大変チャーミングな存在になっていた。素晴らしい。

パトロンその2のボーイ・カペル。
演じたのはアレッサンドロ・ニヴォラ。……フランス映画の中でイギリス人を演じ、
こんな名前で出身はアメリカ、というわけがわからない役者。
いや、でもアメリカ出身には見えませんでした……。
アメリカ人にしてはニュアンスがある。(と言ったら偏見だろうが)
でもイギリス人にもあんまり見えずに(イギリス人はもっとゴツゴツしてるイメージ)、
フランス人じゃないのかなーと思っていた。名前からすればイタリア系だがね。

この人の顔が甘くてねえ。じーっと見てそんなに整った顔ってわけじゃないと思うんだけど、
なんかすごくかっこ良く見えた。あの口髭のせいか?口髭フェチではないはずだが……
この役に魅力がなければこの映画の説得力が全く無くなってしまうんだから、この人がやって正解。

他、脇役として、「お姉さん」と「お友達の女優」がいたが、お姉さんはともかく、
お友達の女優はもっと別な選択肢があったのではないか……
いや、女優としては別に嫌いじゃない。しかしあの老け顔で孤児風の仮装をされると
かなりツラかった。例えて言えば三十女がセーラー服を着たようなもんで……。

フランス人の作る映画――わたしはあまり見てるわけではないけれど、センスを感じるよなあ。
冒頭のシーンから映像が繊細。この繊細さは「コーラス」なんかでも感じたものだ。
「仕立て屋の恋」とかまで行ってしまうと、そのこれみよがしなセンスの誇示(も、偏見)に
うんざりしてしまうが、アメリカ資本でフランスの監督に撮らせた映画くらいが、
わたしの感覚には一番アリガタイ気がする。

ぜひお薦め。とまではいかないが、見てて愉しい。衣裳もさすがにきれいだしね。
だがパンフレット800円は高いぞ。大して内容ないのに。

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