佐藤亜紀が推薦しているので一体どんな曲者が出て来るのかと思いきや。
(と、前にも言ったな、自分。)
一行目が「ぼくらは<大きな町>からやって来た」と始まった時は、
童話仕立てか?と大変びっくり。こめんどくさい小説を覚悟していた身には、
大変読みやすく、さくさくと読み進められました。まさかこんな芸風だとは思わなかった。
だが、その読みやすさとは別に、やっぱり相当に曲者。
巧い、と舌を巻く。まあわたしなんかは若干、佐藤亜紀の尻馬に乗ってるだけかもしれないが、
淡々としたエピソードの積み重ね。冷徹で、あくまでも理性的な悪意が
贅肉のないスレンダーな文体で語られる。ほんと巧い。つまり、訳者もお手柄です。
あれ?悪意は理性的にはなり得ないか?不純物なしの理性的な――酷薄さというべきだろうか。
まさに言葉通りの意味でアンファン・テリブル。あ、語り手は双子ですので。
しかし双子であることの意味は、作品中の99%には存在しない。
読みながら、一人称が複数=双子であるのはなぜなんだ、と疑問に思っていたもの。
最後になってようやく――そうか。こうするために双子か。そして続編もあるのか。
納得する。だが、続編がかなり成功しない限り、ちょっと衒いすぎということになりそうだ。
続編は「ふたりの証拠」。彼女の著作で図書館にあるのは、自伝と戯曲集を含めても9冊、
全部読むつもり。けっこう最初の1冊で期待が膨らんでいるので、
その期待が裏切られないことを切に願う。
早川書房
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原題は“(大きな)帳面”というタイトルらしい。
それを「悪童日記」としたのは……うーん、微妙だな。本当の意味で微妙。
「悪童日記」というタイトルから想像されるものとは全く違った。
いい意味で期待を裏切られたわけだから読後の不満はないが。
しかしやはりタイトルというのはその本の第一印象なわけで……
このタイトルがゆえにこの本と出会えずに終わる人もいるだろうと思うと、ちょっと惜しいな。
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