読んだ。
……わたしは好きだからユルすけど、池上永一。
話の始まりに、でかい大穴が幾つも開いてるぞ!!
10歳まで自由に外出していた女の子が、すぐ男の子として行動するのは無理だろう。
本人が「私は宦官です」と名乗っただけで世間で通用するわけなかろう。
13歳の未経験者を行政機関筆頭に据えるのは無理があるだろう。
この辺で乗り越えられない人はたくさんいるだろうなあ……。
わたしだって、これが池上永一の初作品ならバカバカしくて読んでられないところだ。
ま、ほぼ彼の作品を辿って来たお陰で、この種の破天荒さには若干の免疫はあるけどね。
ただ、歴史小説的にはちょっとどうかと……。
いや、これを歴史小説とはとても言えないのだけれど、いくらファンタジーでも
こういう部分はしっかり作っとかなきゃダメなんじゃないかねえ?
……池上永一に求める部分じゃないか。それは。
しかしそう言うのなら、今回のこれは、池上永一の特長である破滅的なパワフルさが足りないぞ。
それは多分実際の歴史からストーリーを取材しているからでしょ。
つまり、どっちつかずになってしまった。うーん、わたしはやっぱり彼には
そのパワフルさを期待したいけれども。
でも、この程度でまとめておいたからこそ、舞台になったりドラマになったりするわけでね。
痛し痒し。まー、しょーがないかねー。
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うちなんちゅの作家が書く、琉球王国の終焉。
どうしたって悲しくなりそうなもんなのに、池上永一はこういう風に書くんだなあ。
明るく。ドタバタ要素を盛り込みつつ。状況はジェットコースター的に波乱万丈だけれども。
作中、何度も繰り返される、琉球の美を誇る言葉に打たれる。
うちなんちゅの言葉だからこそ打たれる。そうか。全ての誇りはそこにあるのか。
優雅であることに。艶やかであることに。
そしてその基礎には小国としての、刃の上の究極のバランス感覚を持ち。
そのバランス感覚もまた、誇りなのだろう。
わたしはお約束で繰り返される、後宮の女たちの喧嘩シーンが好きだったよ。
「うなじゃら様のおなーりー」……このしれっとしたアナウンスが聞えるようだった。
こういうベタユーモラスなところがいいなあ。
ドタバタで言えば、やはり最初の聞得大君加那志の存在が……
彼女の人生は十分悲惨なんだけどね。有り得ないほどヒサンなので、一種の戯画となってしまう。
これは作者、狙ってやってるのかね?まあ彼のいつものキャラだと言えばそうなんだけど。
そしてその波乱万丈の人生を、作者は少々力技で、美しくまとめてしまうのだ。
池上永一は優しいよね。そう思う。
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ドラマは7月から。
真鶴/寧温が仲間由紀恵は、これしかないというキャスティング。
えー、浅倉雅博が谷原章介?谷原章介は嫌いじゃないけど、もっと合いそうな人がいそう。
ほほー、塚本高史、しばらく見ないうちにけっこういい面構えになったのでは。
………………………………うぐっ!徐丁垓、GACKTかい!!
う~~~~~~む。……まあ、いいんじゃないですか。アリだろう。
谷原章介以外はニヤリとしてしまうキャスティングで、こういう顔ぶれを見ると
期待値が高くなりますな。
でもこの原作を忠実に作るのは難しいだろーねー。多分“忠実に”は無理。
原作の骨子を活かしたドラマということになるんだろうな。
それはそれで面白くはなると思う。がんばれ、NHK。
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