著者は現役?の外交官。
あ、Wikiでチェックしたら、もう退官しているようだね。
「プラハの春」がデビュー作らしい。
なので、あんまりあげつらうのもキビシイかとは思うが……
プラハの春当時、現地で見ていたというのはたしかに強みだと思うよ。
それを書きたいという意思はわかる。それに対して誠実にがんばっているのも感じる。
なので、本当に書きたかった所、骨の部分は努力賞的に評価出来る。
プラハの春についての本というのもそれほどないからね。
しかしなあ。肉である小説部分は相当に貧弱。
許せない、とか、怒りを感じる、というほどではないけど、いやー、やっぱりちょっと……。
型通りのキャラクター。変にキレイすぎる。王子さまとお姫さまのお話みたい。
きれいな人の話を書きたい気持ちはわかるんだけど。
うーん。小説としてはやはり相当に食い足りない。
出版が1997年ということは体験から30年近く経っての執筆なんだろう。
時間が経ったことで臨場感はだいぶ減ったんだろうね。
プラハの春、当日近辺はスピード感もままあり、現場を少々感じたが。
こないだ読んだ、「プラハの深い夜」と比べてしまうせいか
(あれはサスペンスで、ハラハラすべきジャンルなので、比べるのは気の毒なのだが)
もうちょっと緊迫感が欲しいと思ってしまう。
書くべくして書いている、と思う作家はたまにいる。(決して多くはない)
が、この人の場合は逆を感じる。
多分想像力……というか、妄想力が足りないんだよね。
作家の根幹は妄想力だと思うので。
実生活上必要とされる以上の妄想力を持った人が作家である気がする。
実生活がまともにおくれる程度の妄想力では、作家としては食い足りない。
ネット上で「人生が変わったかも~」というレビューを事前に読んでいたがゆえに
期待が過剰だったのかもしれない。(この「も~」の部分で何かに気づくべきだったか)
やはり期待しすぎるのはいけないな。
帚木蓬生を思い出していた。帚木蓬生の方がだいぶ達者であるけれど、
人物が妙にキレイゴトである部分などが共通。
帚木蓬生もなあ、「国銅」は非常に面白く読んだのに。
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