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< おと な  り >(しかしこのタイトルは検索の敵ですな)

どーしよーかなー、でも麻生久美子も岡田准一も好きだしな。
いや、市川実日子だし岡田義徳だし池内博之だし、そんなダメダメな映画になるはずないっ!
……と賭けて行きました。
賭けには勝ったようだ。

気持のいい映画だった。
こういう作り方をする映画は――と記憶を辿って(というより自分のブログを辿って)、
ほぼ一年前に「西の魔女が死んだ」はあるけれど、それ以外では久々に見たなー。
見ながら思い出していたのはフランス映画の「コーラス」。
あそこまで明確な小粋さはないし、それほど似てもいないんだけど。
もうひと匙分、オシャレでも良かったかもなー。
でも監督は、リアル感の方へ振れたんでしょう、今回は。
独自の味を出してましたな。

恋愛映画。
粉砂糖のかかったメレンゲのような……つまりはかなり甘甘なのだが、
甘味はさっぱりしているので、食べ飽きない。
しかし栄養とカロリーを求める人にはあんまり意味のない映画かもしれない。
「映画はガッツリ!」という価値観の人向きではないよね。

役者はみんな良かった。
いい顔ぶれを揃えたと思う。平田満がちょっと勿体ない感じがしたことと、
森本レオがツキすぎていてつまらん、ということくらいか、あえて難癖をつけるとしたら。
谷村美月ががんばってたなー。あのヒジョーにうざったい役をぎりぎりの線で可愛くまとめていた。
これは力量だと思う。エライ。

市川実日子を久々に見られて嬉しい。この人ももう女の子とは言えないトシになったねえ。
もう「食いタン」は出来ないですかね。
いい役者だと思うので、もう少しあちこちで見たいと思う。

池内博之は、実は登場する前に語られていたことと、
本人の雰囲気に齟齬があったと思う。
ひっぱってひっぱってようやく登場したと思ったら、意外に明朗な普通のにいちゃん。
語られているシンゴは、ものすごく繊細で気難しい奴だったのだが。
ここは微妙に失敗かもな。でも、ここでシンゴを下手に複雑に描くとバランスは悪いよね。

岡田准一もすっかりオヤジ……。
でも良い感じにオヤジになっていってますね。満足。
何度も言っていることだが、あの人もう10センチ背が高かったら、相当に役柄が
広がっただろうに。惜しいなあ。近距離の演技にはなかなか見るべきものがあると思うよ。
遠距離で見るといまいちなんだけれども。

麻生久美子は期待通りの巧さ。過不足なし。
谷村美月にバルコニーから覗かれた時の表情なんか、うわー、上手いなー、と舌を巻く。
わたしはこの人をカメレオンだと思っております。なぜこんなにハマルのか、と思うほど
雰囲気に溶け込む。天性の役者ってのはこういう人のことを言うのだろう。

……なんかごく月並みなことしか言えてないが、わたしはこの映画、好きだった。
見に行くかどうか迷っている人にはお薦めしたい。

だがしかし、はっきり言ってこの映画の部屋のようなところに住むのは絶対にイヤだぞ。
作品の基本設定を全否定することになるが。

いくらなんでも。壁薄すぎ。フスマ並みだよ。いや、障子並みかもしれない。
音がテーマということ自体は気が利いてるのになー。
が、それにしたってもう少し音量を絞るべきだったよ。
隣の音があそこまで聞こえて来て、それに耐えられるとは思わん。生活音で殺人が起こる昨今。
ここの部分で拒否反応を持った観客は相当に多いはずだ。
もう少し控え目にしても話の中での役割はちゃんと果たしたろうに。

あと、物語が収束するまでずいぶんひっぱったなーと思った。
終わりそうで終わらない。えー、数えたわけではないですが、多分5,6回はひっぱった。
まあそのダラダラ感も味と言えば味かねー。そのおかげで、ストーリーの中途の苦味を
忘れることが出来たかな。

細かいことを言えば、七緒さんのフラワーアレンジメントのセンスは好きじゃなかった。
野島の作品も大していいと思わなかった。
吉村和敏の写真集は1冊持っているんだけど、そんなに好きじゃない。

まあでも。好きです。

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