疲れた。
読み終わった時が寝不足だった、という理由もあったかもしれないけど、
読了後、どっと疲れた。そんなに一気読みをしたわけではないのだが……
翻訳もので600ページ超、2段組。読んだのは100ページか200ページくらいずつ。
トータルで6時間内外かかった。最近厚めのものばっかり続いて、オナカいっぱいです。
なかなか面白かった。
段々緊迫感が増していって、最後どうなるのか。
そしたらもう、最後はある種の交響曲みたいに(挙げられる曲名などは浮かんで来ない)、
がっつりジャン!ジャン!ジャン!と鳴らして終わり、というような結末でした。
それはそれで効果的だったが、もう少し軟着陸してくれたら疲れなかったかもしれない。
近未来のオクスフォードの歴史学の学生が、研究の一環として中世にタイムトラベルをする。
が、行った先では思いもかけぬことが起こり、送り出した方でも思いもよらぬ事態に陥り……
ハラハラドキドキという話。あまり説明になっていないが。
著者はアメリカの著名なSF作家らしいんだけど、読んでていわゆるSFという雰囲気ではない。
むしろ歴史ファンタジーに近い。SF好きより歴史ファンタジー好き向き。
早い話、タイムトラベルという単語を使っていることと近未来の設定にしていることだけがSFで、タイムトラベルじゃなくて箪笥で繋がっている、でもいいくらいなんだよね。
中世の村の生活の雰囲気がよくでている気がする。
歴史ファンタジーと言えば、そこに出てくるのは多かれ少なかれ力を持った人
(大別すれば、行った先にヒーロー・ヒロインがいるか、タイムトラベラー本人が
パワーヒーローになるか、のどちらか)が多いが、この作品だとみんな一般人。
ごくごく無力。一応タイムトラベラーには多少の知識的アドバンテージがあるけど、
ほんとに「多少」で、その知識が伝家の宝刀になるほどではない。
訳者あとがきに書いてあったことで。
そして本書は、ウィリスが無慮千七百枚の枚数に持てる小説技巧のすべてを
注ぎ込んだ“技のデパート”。じっさい、並みのSF作家が本書のプロットだけを
与えられたら、五百枚の長編を書くのも青息吐息だろう。五百枚で書けるものを
くどくどと千七百枚もかけて書いたとなると、ふつうは非難の対象になるところだが、
この千七百枚がまったく水増しに見えないところにウィリスの凄さがある。
千七百枚が無慮かい、という個人的な突っ込みはいいとして、
そうなの。まさにこれなの。
長い作品を読むのが面倒なわたしは、「これ半分くらいの分量で十分書ける話だが……」と
思いながら首をひねっていたが、読んでてうざったくはないのだ。某○ーンツと違って。
400ページくらいまでは、時速20キロ以下の感覚で話が進むんだけどね。
こののろのろとした歩みが、さほど気にならない。後で考えても、ここまでページを費やす意味は
全く思いつかないんだけど不満はない。やっぱり技なんだろう。
そうですね、不満と言えば、まあ終わりが時速80キロ、最後の数ページは120キロとなって、
多少話が雑になったことくらいかな。話の丁寧さを犠牲にしてスピード感を得た。
ただ、もうちょっと話を続けてくれても良かった気がする。
最後にカタルシスを得たいじゃないですか、こういう話だと。
キャラクターが――そんなに目新しくないが――魅力的。
シャーロット・マクラウドのシャンディ教授あたりと同じ系統。
大学教授の造型だからだろうか。シャンディ教授シリーズでも歴史ファンタジーみたいな
作品があるし、けっこう近いものを感じる。本作の方が話の骨子はシリアス。
コージー&ユーモラスという意味においては双方ともに同じような感じだ。
まあマクラウドの方が全体的に可愛らしいんだけどね。
もう少し短くしてくれたらありがたいなー、とはものすごく思うが、多分あと何作かは読む。
このタイムトラベルシリーズの好きは動かないだろうが、その他の作品を読んだ時に
どうなるか、という気がするな。ガチガチのSFになっていたらちょっとがっかりするかも。
でもきっと上手く読ませちゃうんだろうけど。
早川書房
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次はこれの続編の「犬は勘定に入れません あるいは消えたヴィクトリア朝花瓶の謎」を読む。
多分タイトル的に、ジェローム・K・ジェローム「ボートの三人男 犬は勘定に入れません」
へのオマージュだろうと思っている。これはイギリスのユーモア小説で、面白かった
イメージがあるな。詳しい話は忘れたが。
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