2009年のドラマ。今回初めて見た。
見始めて、ああ……。と胸を突かれた。
金も手間も時間もかけてる。いい頃のドラマだ。
この頃。本木雅弘もかっこ良かった。阿部寛もかっこ良かった。
菅野美穂も可愛かった。香川照之も……不祥事のはるか前でいい役者だった。
見ててしみじみとした。良かった頃のドラマ。
ものすごく質がいいドラマなことは間違いないとして、
わたしはこの時代を描いたドラマが基本苦手。
いや、前半はいいのよ。正岡子規の死くらいまでは。
子規の死はツラいけれども、歴史上の出来事として捉えられるしね。
だが後半の戦争部分になると、……だめだー。近代戦争の映像化は苦手。
ぎりぎりで戊辰戦争。いや、戊辰戦争も前はドラマで見たけど、今はもう見たくないな。
戦国時代の戦くらいまでなら見るけど。時間的に距離があるから、そこまで切実感がない。
でも戊辰戦争あたりからすごく現実に近くなってきて嫌だわ。
今回の日露戦争が辛かった。特に二百三高地。特に旅順港封鎖作戦。
前者は乃木希典が、後者は広瀬少佐がいたわしくていたわしくて。
そして駒として死んでいく人々の数。
もしあんな場所に自分がいたら気が狂うと思います。
なので、第17回以降から最終回26回までたどり着くまで長かった……
見るのに気力が要った。
本来は90分のドラマを半分にして放送した。元々は全13回。
90分だと見る気力が湧かなかったと思うので、良かったと思う。
……なんか、半年以上かけて見た気がするので、前半の感想はなくなっちゃったなあ。
最終盤の細部だけ言っても仕方ないし。
主役の皆さんの演技とか、豪華な顔ぶれとか、もうそういうのは当然で。
とにかく「いい頃のドラマ」というのが感想。あまりに大雑把すぎますけど。
しかしドラマの丁寧な仕事ぶりにはちゃんと感心している。相当に感心している。
こういうドラマを、……今後も見られればいいんだけど、熱意も、予算も、技術も
なくなってきているような気がする放送業界には、もう無理なんじゃないかな……
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軍人を美しく描くフィクションは。複雑。
戦う人は基本的に美しいのよ。人間、遺伝子から戦士に美を感じるように出来ている。
理念として戦争が否定されている近代以降は、スポーツ選手に人気が集まるでしょう。
が、戦争はなくならないだろう。利害関係の解決は結局武力で決めるしかないんだろう。
アメリカが9.11以後にイラクへ攻め込むまでは、「世界は戦争を繰り返しながらも、
その規模は縮小し、数は減っていく」という希望をわたしは持っていた。
人類は少しずつ利口になっていけると。
だがあの安易なイラク侵攻を見て、それは無理なことなのだとわかった。
国連なんか何の歯止めにもならない。多数決は、世界平和は、利害に勝てない。
そして今は当時よりもさらに戦争が身近になっている。
平和であると信じられている日本でさえ、ロシアとウクライナの戦争の影響を
市民生活のレベルで受けているし、北朝鮮のちょっとしたさじ加減でいつミサイル攻撃を
受けるかわからない。
世界はわたしが思っていたよりもっとずっと容易に戦争を始める。
その時頼りになるのは自衛隊しかないだろう。憲法違反の存在である自衛隊に。
無抵抗主義は肉食獣の中では獲物になるだけだろう。
国を失う覚悟が出来なければ、頼るのは自衛隊しかないのだ。
そして本格的に戦争になった場合は、戦場に出るのは自衛隊員だけではないだろう。
生存闘争は我々の遺伝子に刻まれた――武器か呪いかであるけれども、
しかし、その本能にあらがって戦争をしない理想を求めなくてはならない。
そうでなければ人間が歴史を積み重ねてきた甲斐がない。
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辛かったけど、質の高いドラマでした。
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