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< 日日是好日 >

これ、「にちにちこれこうじつ」ですか。「ひびこれこうじつ」だと……
と、前にも思った気がするなあ。ひびこれこうじつの方が語調がいいと思うけど。

3、4年前の映画だと思っていたら、7年前の公開ですか。時間感覚が……
劇場に見に行こうかどうか迷って結局行かなかった。劇場に行ってたら
ちょい不満は持ったかもなあ。今回はテレビ放映を見て吉。

わたしは原作者の森下典子には「デジデリオ・ラビリンス」で好意をもっているが、
原作は読まなかった。
映画としては地味。かなり。そこを納得した上で見る分にはいいけど、期待が大きすぎると
退屈を感じるかもしれない。
でもじっくりお茶を描いてくれるのはありがたい。しかも実に一般人目線で。

高校生の時「お菓子が食べられるから」という理由だけで茶道クラブに入った。
部活ではなくクラブ。週に一回、時間割に組み込まれているヤツ。
なので、最初の最初の袱紗さばきなんかはごくかすかに覚えており、なつかしく見た。

わたしが茶道クラブに入ったと言ったら、父が妙に喜び、さっさと茶せんを買ってくれた。
茶せん以外の、最低限の茶道具は家にあった。――どうやら亡くなった祖母が若い頃、
お茶を教えていたらしいんです。

だからといってクラブでお茶の作法をちゃんと覚えるわけでもなく。
茶せんはごくまれに、てきとーに抹茶を泡立てて飲むのに使っていた。
抹茶は次第にバニラアイスクリームに混ぜて飲む量の方が多くなり、
何度か買って終わった。ここ何十年は全然買ってません。

というようなことを思い出させてくれる映画でした。
小学6年の時に亡くなった祖母は、茶道を教えてくれることはなかったけど、
茶道から派生したことをちょこちょこ教えてくれた。

いわく――煎茶の淹れ方。急須の持ち方から始まって、茶葉の量、どのようにして
(ポットから)お湯をいれるか、どのくらい待ってから湯呑に注ぎわけるのか。
均等に注ぎ分け、一滴も残さないように急須を置く。
湯呑の正面を相手に向けて、茶托に乗せて、両手で「どうぞ」
――これを幼稚園児相手に繰り返した。辛抱強く。ちょっとでも出来ると大きく褒めた。
祖母の友達や親戚が家に来るような時、わたしはいさんでお茶を淹れて、
「すごいねー」と褒められることを喜びとした。

いわく――美しいものはじっと見よ。
両手をついて、真剣に見入ること。「拝見しました」と感謝をもってお辞儀すること。

いわく――「あなたは美しいものが好きね」。
うかうかとその言葉に乗せられて、美術と花が好きな人生になった。

祖母はわたしの人格形成に良い影響を与えている。

わたしは黒木華が長らくうっすらキライで……。
最初の出会いが「真田丸」だったのが悪かった。
知らない地味な女優が大河のヒロイン!?ということに
強い拒否感を持ったようなんですよ。当時の自分は。
あとは名前の読み方もキライ。華をハルとは読まんやろ!読めるのがいい名前なのだ!

まあその後何年も経って、いい女優だと思うし、嫌いではなくなったが、
どうも最初の印象はかなり後をひいて、結局そんなには見てないかなあ。
出てきたら出て来たでうれしい女優ではあるんだけど、
主役ではどうも惹かれないというか。

がっつり出たので見たのは「ビブリア」と「下剋上球児」。……どちらも話があんまりね。
「重版出来!」も「凪のお暇」もこの人が主役じゃなかったら見ただろう。
難しいもんですね。

でもこの人に本作は合ってたね。森下典子のイメージとは違うけど、
まあそれはあんまり関係ないしね。
道具とか掛け軸とかを深く受け取っていたように見えた。嫌味なく。
最初の大学生役の時には年齢のせいかちょっとツライように見えたが。
30過ぎまでを演じるのなら相応だろう。実際年を重ねるごとに似合ってきて、
見やすくなっている。着物も似合ってたし。

多部未華子は好きな女優。最初、役柄は逆でもいいのでは?と思ったが、
やはり人生に悩むところは黒木華の方が座りはいいかなあ。
今となっては多部未華子と黒木華が一緒の作品に出るのは意外な気がしますね。

樹木希林が出ることで、伝説の先生的な扱いにするのかと思っていたら、
わりと(理念的なことは)何も知らなくて笑った。でもそういう造型にしたのが吉。
亡くなった後に見ると、この静けさが心に残りますねえ。

折々の小さな自然を丁寧に映してくれるのが良かった。
でもねー、これ実際にやると話の密度とは対立する部分だから、難しいのよねー。
見ていて満足出来る映像美に持ってきてくれてればいいが、
ただ自然を映していたからいいってもんじゃないしねー。
美しくても、それで話が薄いと感じれば物足りないし。
今回はありがたい方の自然描写でした。

映画館で見たら、わたしは物足りなかっただろうなー。ちょっとさりげなさすぎて。
なので、今回テレビ放映で見たのはちょうど良かったのではないでしょうか。
これを映画化しようと思ったのもある意味で驚きだが、結果は吉だったと思います。

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