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池上永一「レキオス」

この本は……うーん、相変わらずわからん……(だが面白いのだ!)

冒頭、やたらと派手に場面が展開していくので、「うわ、ついに来たか」と思った。
わたしはオタクの気配漂う小説には、拒絶反応を示すところがありまして……
状況を全く説明しないうちに、どこだかが爆発炎上するわ、地面から逆さ女が出現するわ、
それに兵器の名称がちょっと詳しく書かれたりしていたもんだから、
池上永一、ついにオタクの本性を表したのか!?と思った。
そのくらい、アニメ的な始まり。

……いや、別にアニメ自体が嫌いなわけじゃないんだけど、
しかし(某「○○の旅」のように)アニメ的な小説は大嫌いだ。
アニメ的な内容はアニメで表現すればよろしい。小説では小説でしか描けないものを書け。

でもまあ、それは杞憂だった。ちょっと読み進むと、いつもの池上永一的世界が待っていた。
……かなりぶっとんでるが。今まで読んだのも「何なの、これはっ!」と叫ぶほど
四次元的だったが、そういう意味ではこの本が一番突き抜けている。
ほんと、困りますよ。こんな小説を書かれると。

文庫で600ページ、登場人物もかなり出て来るから、それだけでごった煮風にはなる。
しかし話の展開がねえ……。わからん……何をどう考えたらこんな話になるんだ。
頭で納得しようとすると、ものすごく辛い話だ。設定を吟味すれば「有り得ない」の
オンパレード、何でわざわざここまで非現実的な設定にするんだ!
でも部分部分に、現実がしっかり織り交ぜられている。「レキオス」で言えば、
沖縄の在日米軍についての登場人物たちの感情は、現実の沖縄を映しているんだろうな、と思える。
これを読めただけで、この本を読んだ意味があったと思った。こんな風に書かれれば、
ニュースで伝えられるものよりも、はるかに印象強く受け止めることが出来る。

それにしても、池上永一の小説を読むたびに、「わからん」と呻いているなあ。
読んだ中で一番突き抜けた「レキオス」ではもう要約さえできない。
それくらい極彩色に話が展開する。シリアスになったり、ユーモラスになったり、
ギャグになったり、切なくなったり、アドヴェンチャラスになったり……何でもありだ。
伏線も引きまくり。いや、これに始末をつけるのは絶対無理だろ、と思いつつ最後まで
読むと……きっちり整理された状態ではないにせよ、何となく伏線も回収され、
何となく納得もさせられてしまっている。一体なんなんだあ。

やはり書く人の力量なんだろうなあ。力があるから読ませる。
話の破綻に向かって猪突猛進しているように見えるけれども、崖の一歩手前で辛くも留まり、
転落を免れている。そしてまた別の崖に向かって全力で走り出す。読んでいる方は、
いつ落ちるかハラハラしつつ、目が離せない。
なんだかもうほんとに呆れる。池上永一。

実は文庫版「レキオス」には、大森望と豊崎由美なる人による対談が収められていて、
「池上永一とはこういう作家だ」ということが述べられている。読んで、おおむね
考えていることは一致し、「ああ、やっぱり」と安心したんだけれども……
……でも、実は他人の意見なんか知らないまま、読んで「何なんだあっ!」と
叫んでた方が楽しかったなあ。この正体不明感が大いなる魅力だったのに……
他人の意見を読んでしまうと、しかもそれが一応書評家のような人だと、
(それが頭から正しいとは考えないが)一般的な定義づけになってしまう。
あ、でも読んで良かった情報は、池上永一は「物語が降りてくる」タイプの人であるらしいこと。
良かったー。安心したー。
綿密な構成と取材によって生み出されている、なんて言われたらどうしようかと思った。
信じられないもの。ああいう話は霊感によってしか書けない。絶対。多分。きっと。

さて、寡作な池上永一、作品は残すところあと1である。「シャングリ・ラ」。
しかしこれは、わたしにとって試金石である。というのは、池上永一初の、
”沖縄”ではない話らしいから。
なんのかんの言って、沖縄好きのわたしにとって、”沖縄”だからこそ面白いと思う部分も
当然ある。ノロやユタの話とか、民俗的な話とか。
「シャングリ・ラ」でその部分がなくなった時、どう思うか。自分でも楽しみだ。

レキオス
レキオス

posted with amazlet on 06.05.05
池上 永一
角川書店 (2006/01/25)

コメント

  1. どるしねあ より:

    Unknown

    >池上永一は「物語が降りてくる」タイプの人

    うまいですね!
    その通りかと。

    シャングリ・ラも凄いです。
    ぶっ飛んでます。
    あと少しアニメアニメしていなければ
    世界文学に通用しそうなんですけどね・・・

  2. uraraka-umeko より:

    Unknown

    コメントありがとうございます。
    本の感想の部分にコメントがあるのはマレなので、嬉しいです(^^)v。
    (あ、でも他の分野でも、ここんとこずっとコメントはなかったが……)

    「物語が降りてくる」とは対談の中で言われていたこと(本人談?)なので、
    わたしのテガラではありません(^_^;)。

    やっぱりぶっとんでるのか……。
    対談の中で、「レキオス」は「シャングリ・ラ」の原型だと言われていたので、
    覚悟はしてるのですが。実は図書館に予約していたのが回って来て、もう手元にあるんですよ。
    先に読まなきゃいけない本があるので、まだ取り掛かれないんですけど。

    そうそう、もうちょっとで「ナンカスゴイ!?」というレベルまで
    いきそうな作家ですよね。
    ただ、それを狙えば途端に駄目になるんだろうし、
    今のまま、憑依系(あるいはドラッグ系←語弊はあるか)で、
    面白いものを出来るだけ長く書いてくれることを祈る方がいいかな。
    憑依系の作家は、憑きものが落ちた時がねえ……。

    シャングリ・ラを読んだら多分また感想を書きます。
    その節はまたお立ち寄りのほどを。