図書館のフィーチャー本として目の端でタイトルをチェックし、それから10年くらい
経ってから読んだ。
小説だったのか!
てっきり図書館員の日常のエッセイだと思っていたよ。
そもそも期待していたものと違う、というのはスタートでつまづいたというべきだが……
うーん。なんか中途半端だねえ。
主人公に感情移入が出来ないしねえ。頑なすぎるっていうか……
癖があっても魅力的な造型というのはいっぱいいるけど、(むしろ癖があるからこそ魅力的)
この主人公は単に圭角が多い人という風に見えてしまった。
変なところで力む。その力みどころが理解できなかった。
それにいくら短編とはいえ、ゲストの登場人物の薄さがツライ。ぺらっぺら。
図書館の生活の部分はまあ楽しめるんだけど、本探しをメインにしたミステリにするのか、
図書館とはなんぞや、と論じるのか、政治の中の図書館の攻防を描くのか、
その3点が上手く組み合わさっておらず、中途半端と感じた。
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わたしは納得出来なかったんだけどね。
図書館って、無料貸本屋じゃいけないわけ?
主人公が何度か内心呟くのよ。「こんなんじゃ図書館なんて無料貸本屋にすぎない」と。
そのどこがいけないのか、はっきり言ってわたしはわからない。
無料貸本屋だからこそ、ありがたいものなんじゃないか。
だからこそわたしが数十年利用しているんだ。それの何がいけないんだ。
近年でこそ1か月10冊内外しか読まないが
(そしてスマホを持ったことによって今後読書量はさらに減るだろうが)
7、8年前までは月20冊~25冊の読書量だった。
月に20冊、本が増えていってごらんなさい。あっという間に置き場所がなくなるから!
大学卒業までは「本は買う派」だった。
小学校の図書室はそれほど利用しなかったな。
ごくまれに親が西公園の市民図書館に連れて行ってくれることもあり、
移動図書館を利用した時期もほんの少しある。
あとはまあ、だいたい家にある本を読んでたんですね。主に兄の本。
我々兄妹は月1冊、本を買ってもらえることになっており、それを選ぶのがすごく嬉しかった。
中学生から自分で本を買うようになる。学校帰りにほぼ毎日友達と本屋に行ってたなあ。
お小遣いの範囲で何冊買えるかというのが毎月悩みどころだった。
今の子供のようにコンビニやファストフードでの飲食にお金がかからなかったから、
お小遣いの大部分は本代だったと思う。
高校ではどっぷり図書室に浸る。
そういう世界の人は知ってるだろうが、高校の図書室には、一名を“常連”と言う人々が集う。
図書室をねぐらにして放課後を過ごす人々。彼らは往々にして図書委員を兼ねる。
わたしは他に部活を掛け持ちしていたので放課後ずっといるわけではなかったが、
とりあえず昼休みと授業後には“出勤”し、常連と会話をかわし「行ってくる」といって部活に行く。
1日1冊のペースで読んでいたのはこの頃。常連には多読家が何人もおり、
貸出数を競ったりしている。
大学の頃はサークルでだべっている時間が長く、高校の時ほどは読まなかったが、
バイトで稼ぐようになったので買う本の量は増えた。しかも大学生協で買うと10%引き!
これは嬉しかったなあ。まだamazonとか楽天ブックスとかがない時代。
このままずっと本を買い続けていくんだろうなと思っていた。本を買うのが好きだった。
しかしこの時点で本棚が四本。文庫で買うのが掟だったが、置き場所はすでに問題だった。
ところが、就職したら通勤途中に図書館があったんですねー。
ここであっさり「買う派」から「借りる派」へ。それ以来、買った本は数えるほどしかありません。
多分100冊もないと思う。うん、まあ、100冊くらいはあるかな。
でも買う本はどんどん減り、近年はそれこそ1年に2、3冊あるかないか。
そもそも20歳過ぎくらいから、本屋に行っても欲しいと思える本がなくて
イライラすることが多くなった。
あんなに輝いていた、何でもかんでも欲しかった、その心躍りがなくなった。
ぱらぱらめくっても面白そうと思える本が見当たらない。ツライ。
図書館の何がいいって……内容をそこまで吟味しなくてもいいところ。
わたしは趣味の範囲が狭くてね。平均よりは本を多く読んで来た方ではあるけれど、
好きなジャンルと言えるのがミステリ、教養系エッセイ、歴史、美術くらいしかなかった。
その上、ミステリだったら何でも来い、というほどココロが広くもなかったしね。
北村薫は大好きだけれど、加納朋子や近藤史恵は好きじゃない、という心の狭さ。偏食家なんです。
だが、図書館に行けば!タイトルだけ見て、面白そうと思えばすぐ読める!
つまらなくてもココロも懐も痛まない!スペースの心配もない!
大層オカネモチになった気分。「ちょっと面白そうかな」と思っただけで手に取れる贅沢感。
図書館がなかったらわたしの読書人生はありません。
ここから「図書館とわたし」について、いくらでも語れる自信はあるが、
……しかし内容を引き締めて語れる自信は全然ナイ。
実は本当に語りたかったところはここからではありますが、すでに長々しい話になっておりますので、
今回の噺はこれまで。ちゃんちゃん。
そしてこのタイミングで初めて「英雄たちの選択」に門井慶喜が初登場……。
共時性だ。
由井正雪の回だった。この人、時代物も書くのか。
この作品だけだと、え~、直木賞作家?って感じだけどなあ。
うーん。どうなんですかね。
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