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<オリバー・ツイスト>

【真面目な作りの映画なのだが……勿体ない。】

はっきり言って今ひとつ面白くない。見ていて多少退屈。
一般観客向けには話の盛り上がりに欠けると思った。元々「オリバー・ツイスト」が好き、
あるいは文芸物だから腰を据えてじっくりと、という観客にはいいかもしれない。
テンポと、密度があとほんのちょっと(15%くらい?)あればなあ。
せっかく作ったのに勿体ない、と思った。

見どころがないわけではない……というより、けっこうあるんです。
なんといっても当時のロンドンの雰囲気。ここはかなりリキを入れて作っている。
過剰さを感じるほど濃密に。はっきり言って、下町の話だから被写体は美しくはないんだけど、
かなりがんばっている!と感じる。同じ力配分で貴婦人方を映したら、
わたしのようなコスチューム好きは、それだけで満足と言うであろうほど。

役者さんも良かった。パンフレットを買わなかったので、誰が誰やらわからないが、
皆さんが自分の役をちゃんと把握してやっていた感じ。すばらしかったのは
フェイギンですねえ。「悪党」の部分と「良い奴」の部分が馴れ合わずに同居していた。
「気の良い悪党」はいくらでもいるけれど、フェイギンさんは悪党の不気味さも
ちゃんと持っていた。それがすごい。
ドジャー少年も良かったなー。かっこよかった。少年役は他に何人もいて、
これといって台詞のない子役も多いんだけど、上手いこと撮ってた。

役者さんたちの魅力で、最初のフェイギンさん家での共同生活は、とても楽しそうに見えた。
もうこのままオリバーが悪の道に染まってしまっても、それはそれで幸せなのではないかと思ったくらい。
こういうところはすごくいいんですけどね。

セットも良し、役者も良し、金もあり、制作態度にも真摯なものを感じる、
作品が良い物になる条件は揃っている。……だが、やっぱりストーリーが。
でも、下らないとか下手くそだ、っていうんじゃないから、
これがまた勿体ないんですよねええええ。いいんだけど……映画にちょっと合わなかっただけ。
もうちっとミーハー風味にしたら、それだけで良かっただろうに。
しかしそうしなかったのは、きっと原作に敬意を表した結果だろうな、と推測されるので、
もうジレンマですよ。皆さん良いお仕事なんですけどねえ。

ただ、ストーリーで正面から文句をつけたいのは、首吊りのところ。
あの経緯はあまりにあんまりだろう。もっと緊迫感を出さんかい!

あまり客入りが良くなかったらしく、わたしが見たときはハコが相当小さくなっていた。
その上で、ほとんど満席、わたしは前から二番目で見る羽目になったので、
やはり映画に対する集中力に打撃を受けた部分はあるだろう。
ちなみに両隣はなぜかどちらもご年配の方だったのですが、左隣のおばあちゃんは
最初から最後までほぼ寝っぱなし、右隣のおじいさんも、途中でおやすみでした。
正直に言って、少々寝息が……まあうるさくないこともなかったんだけど、
内容に集中したいというほどの映画じゃなかったから、気にならなかったな。

作り自体は決して嫌いじゃなかった。ずっと前に見たミュージカルの舞台と
似通うものを感じて、懐かしかった。問題は、ひとえにひとえに、ストーリーのめりはり……。

コメント

  1. あん より:

    こんばんは
    全体に漂うクラシカルな空気が好きでした。文芸作品には甘い評価になりがちなので(^O^)「プライドと偏見」同様楽しみました。Tb失礼しますね。