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◆ 東大寺と東北 復興を支えた人々の祈り

すみませんでしたッ!!

……まあ何しろね、東北歴史博物館のエキシビは信頼していなくてね。
といっても近年では2回見たことがあるだけなんだけどね。
「大白隠展」と「アンコールワット展」。前者は来ているものが酷く、後者は見せ方が酷かった。
わざわざ遠くまで行って、あれではなあ……。
やはり主催者自体がエキシビ慣れしてないとだめなんだろうか。

と、思いながら恐る恐る今回のエキシビに行ったところ、大変満足して帰ってきました。

モノがかなり良かった。わたしは2番目の展示の「金銅八角燈籠火袋羽目板」にやられました。
あの大仏殿の前のでかい燈籠の八角形の中の1枚。
いや、これはね。現地に行っても見ませんよ。燈籠は何しろ近づけないよう囲まれてるし、
燈籠は燈籠としてしか見ない。ああ、燈籠ね、で終わってしまう。
しかし今回、目線の高さでライティングもちゃんとして細部を見るとですね。

涙が出るほどいい。

奈良時代らしい、ふっくらした音声菩薩(おんじょうぼさつ。初めて聞いた。)。
あたたかい造型だ。金銅鋳造なんだけれどもむしろ木彫りのあたたかみ。
冠や天衣の装飾部分、宝相華唐草の曲線が無類だった。
地がアーガイルのような縦細の菱形の金網?なんだけど、その金網自体はかなりごついものながら、
表に面を出すのではなくて線を出すことで、そのごつさをかなり抑えている。
ああ、いいねえ。ずーっと見てた。もうこれだけで来たかいがあったというものだよ。

伎楽面「師子鬼」「酔胡王」
前者は全面に赤土色を塗って、眉毛を1本1本描いている。
後者は鼻がすごく高くて、これはもう完全にモンゴロイドじゃない。
中央アジア。ペルシャ。いそうだもの、こういう人。

「金鈿荘大刀」(とその復元模型)
相当に細身の儀式的な刀。本物の方はかなり朽ちていて、しかしその中でコジリ(鞘の先端)と
その逆の柄の末端部分(柄尻?)に被せられた金細工はまったくきれいで金の威力を感じた。
そしてその復元模型が隣に飾られてるんだけど、これがまた美しいの!
華奢で華麗。繊細で豪奢。
鞘は多分漆で、ぴかぴかした黒。そこに流麗な金の唐草。全面に。
2か所ほど、おそらく水晶玉のアクセント。
柄は真っ白で鮫革を模しているようなぶつぶつ、そこに黒メノウのようなアクセント。
柄尻とコジリに金の唐草の被せ。
西洋的なデザインと言ってもいい。唐突にベルバラのオスカルを思い出した。
フランスロココの美術の中に持って行っても違和感がない。
惜しむらくは刀身も見たかった。あんな細身の剣の刃がどうなっているものかと。

「重源上人座像」
東大寺復興の立役者、という頭があるせいかどうしても狷介に見える。
大仏を再び作るなんて金のかかること、相当な強引さと政治力がないと無理だろう。
金を集めるのに人格だけでは足りません。
運慶作の可能性もあるといわれているそう。

「公慶上人座像」
それに比して公慶上人の方はこれはもうほんとに信仰の人、という感じ。人格の高さを感じる。
温容。弟子が作ったものだそうだ。敬慕の念が伝わってくる。
横から見た時の耳の精巧さ。
そして皺がすごいんだよなあ。皺なのかね?ひび割れなのかね?例えていえば萩焼の貫入。
それが肌のリアルさに繋がっている。時代はだいぶ下がって江戸。

「五劫思惟阿弥陀座像 二体」
これは衆目の一致するところ、こけしだ。あるもの、こういうこけし。
ずっと座禅を続けていたので、髪を切る暇もなく、螺髪が分厚くなってしまった様を表してるそうだ。
いや、髪が伸びてもこうはならないけどね?
造型面ではそっくりな二体の仏像だが、片方が重源が将来した中国制作で、
それをモデルにしてもう片方がわずかに後に作られたという見方だそうだ。
先行が印を結んでおり、後の方が合掌。後の方は袖のたるみが美しい。

「地蔵菩薩立像」
快慶作。端正。それほど大きいものではない。1メートルくらいかな。
安倍文殊院の渡海文殊を思い出した。その端正さから。
衣の模様が細かい。これなあ。衣紋が美しいんだけど、そのでこぼこ部分をものともせず、
衣全体に細い細い四辺形の編目模様が入ってるんだよね。1ミリか2ミリじゃないだろうか。
描線?彫った?どっちにしても超絶技巧だと思うわー。
描線ではここまで細く均等に出来そうもないし、彫ったのだとしたらやっぱりその均等性がすごい。
あのでこぼこをものともせず。
どうやりましたか、と訊きたい。

名作は以上。
他にもお水取りで使う紙衣の着物(木綿を裏につけているそうだ)の質感も面白かったし
(元は真っ白で使ったあとの汚れが全体的にあるが、それがあってもなお味わいがある。)、
わたしは漆にはほとんど興味がないけど、一目見て「ああ、白洲正子好みだなあ」と思った
やっぱりお水取りで使う「朱漆塗担台と桶」も美しかった。

数が相当に来ている。
出土瓦とか書面の類とかも多いので、まあそういうものはそれなりだが、面白いものもあった。

メインの展示室とは別な部屋で、陸奥国分寺の十二神将像もあった。
鎌倉時代。躍動感があってなかなかいい。十二体のなかには雰囲気が違うものもあったので
全て同時に作られたかどうかわからないなと思った。

普通、十二神将といえば迦楼羅とか婆娑羅とかと書いてあると思うが、
(え?違う?あ、迦楼羅って入ってないのね。というか、いろんなところで十二神将は
見ている筈なのに、一つとして馴染みがある名前がないぞ!)
今回は子神(ししん)から始まって、十二支の神として名前が書いてある。
あんまりこういう風なの見たことない。ふりがなふってなかったら読めないなあ。

……それはいいのだが、わたしが丑神(ちゅうしん)の前にいる時に後ろを通って行った
若い女の子が、「あ!ちゅうしんってことはネズミ?」と素で言っていて、なんか地味にキタ。
いや、丑ってかいてあるやろ。ってチュウって鳴き声やんか!とツッコミたかった。

寅神(いんしん)がかっこよかったです。

すっかりアマく見ていたので、日曜日に行ったんだよね。別に混むこともないだろうと。
10回位行ってると思うが、あそこ混んでるの見たことないし。
……しかしさすがに東大寺だというか、駐車場がほぼ満杯くらいに人が入ってました。
展示室もけっこう人がいたので1回出てお昼ご飯食べてから夕方に戻って来ようかな?と思ったが、
再入場不可と書いてあったので、人が少ないところを見計らって順不同に見ました。
そのせいもあるが、2時間以上かかった。
今後行く人は甘く見ないで、平日に行った方がいいと思います。

見ごたえ十分。満足でした。見くびっていてどうもすみませんでした。

あ、そうそう、土日だけしかやってないそうなんだけど、入口のところで
何だかのデモンストレーションがあった。無料。
(VRゴーグルっつうの?今日鈴木亮平のインタビュー記事を読んでそう思った。)
ごつい眼鏡をかけると、大仏と大仏殿周辺の写真が360度自由に見渡せる。

右を向くと右に大仏。左を向くと脇侍の菩薩。撮った時カメラが高い位置に設置されてたようで、
下を向くと高所恐怖症の人は一瞬うぞうぞするかもしれない。臨場感。
画像は一昔前の新聞写真程度の、粒子が見える程度の粗さで高精細とまでは言えないが、
すごく面白かった。写真は何枚くらいあったかな。大仏をアングルを変えて6、7枚?
普段見られないアングルからだったよ。
大仏殿も回廊の辺りから見て2枚くらいかな。

これ東大寺全域でやってくれたら相当に面白いな。
昔、こういう感じでエジプトの遺跡をバーチャルリアリティで体験したいと思ったものだが、
実現してますねえ。未来だ。

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