丁寧に描かれたドラマで良いところは多々あったと思うのだが……
いや、最後まで面白く見たんだけれどもね。
設定的に、どうしても乗り越えられない部分が2点あった。
児童虐待の話ですよね?ってところと、
手紙くらい自分で心をこめて書かなきゃダメですよね?ってところ。
いや、それはなるわ、トラウマに。
習字その他を理由もなく強制されて、遊びにも行かせて貰えないって。
子供本人がやりたいと言ったわけでもなく。それに終盤判明するけど、先祖代々の代書屋だったって大嘘なんでしょ?
それを信じて生きてきた二十数年はどうなる?その嘘だけで許せないわ。
実母のことを全然教えてもらえないとか。ましてや話題にすることすら憚られる雰囲気とか。
連れて行こうとしたんでしょう?それを祖母が奪ったんでしょう?
虐待だと思います。
大人になって、子供時代の自分を振り返った時に、哀れみを感じてしまう……
そういうのは、やっぱり育て方が間違っている。
「お祖母さんは実は鳩子を愛していた」と、いい話にしようとしているけど、その時受けた心の傷をどないせいっちゅうねん。
その時、辛かったんだよ。その時、どうしようもなく辛かったんだよ。
愛していれば何をしてもいいの?って話ですよ。
若い頃読んだ新井素子という作家の作品で「カレンダー・ガール」というのがあるのだけれど。
そこに登場する人物の台詞にこんなのがある。(正確な引用ではない。)
「親が子供を愛するのなんか当たり前だ。義務でもなんでもない。だが、子供に“自分は愛されている”と
実感させることは親の義務だ」
……今から思うと、これを書いた時彼女は二十代前半だっただろうし、よく書けた台詞だなと感心するわ。
ラノベ第一世代の作家だが、今のラノベと違って内容に骨があった。
世の親で、これをわかっている人は少ないんじゃないか。
意識上にある人は2、3%くらいだろうと(根拠はないが)思う。
愛することと、愛されていることを実感させることの、改めて考えてみた時のそのものすごい距離に絶望すら感じる。
人と人とは結局は分かり合えない。この距離は乗り越えられるものではない。
太陽と地球くらい離れている。暗い宇宙の真空の中で、そんなに離れていたら心は届かないよ。
まあ鳩子は最終的にはお祖母さんを赦し、お祖母さんに赦されたような気分を味わうんだけどね。
そういう結果にたどり着ける人はいいけど、その恨みを忘れられないとしても無理はない。
忘れられない心の狭さを責められても、ますます心は傷つけられて頑なになるだけだしさ。
手紙もね。設定的に、めんどくさいからプロに頼もうっていうわけじゃないんです、ってみんな言い訳をしているけど、
結局それは言い訳です。他人に自分の心を代弁してもらおうなんて、根本的にオカシクない?
弁護士が被告に付くのは複雑怪奇な法律に素人が歯が立たないからだよ。専門家。
自分の心の専門家は、自分だろう!
自分でも熟知してない可能性はあるけど、少なくともどっちが熟知しているかだったら赤の他人じゃないだろう!
「技術で上手な手紙を書く」という意味の代書屋だったら多少の意味はあるかもしれない。
でも依頼人が「自分の気持ちを余すところなく伝えて欲しい」なんて願っているのはオカシすぎる。
あり得ない他力本願。何を甘ったれたことを言っているか。自分で書け、自分で!
唯一代書する意味があったとしたら、絶縁状ですか。
まあ天国の旦那さんから来た手紙は、これも意味がある。しかし登場が不自然に遅すぎ。
しかしお悔やみ状とか、離婚通知とか、借金断り状とか、絶対代書じゃダメでしょ。
なによりお義母さんに書く手紙を代書屋に頼んじゃダメでしょ。
10年ぶりの元カノに書く手紙も、いくら名前が薫だからって、それが女文字で来たら、
受け取った方はその経緯が気になって調べてしまうが。
調べるほど懐かしさも好意もない場合は、「なんでコイツは奥さんに書かせてるんだ?」で軽蔑して終わりだ。
全く意図は通じない。そんなことをしたことで、懐かしい思い出が嫌な思い出になる可能性の方が高そうだ。
……という風に、話の筋としては納得出来ない部分満載。
だがそこを除けば、ドラマとしては良いドラマだと思いましたよ。
前述の通り、設定自体にちょっと無理があるので時々ストーリーが変なのだが、
台詞や空気感、テンポや密度など、とてもバランスが良かったと感じる。
多部未華子は好きでね。じっと見ていて飽きない女優。
倍賞千恵子さん……もとい、美津子さんとのタッグはこないだの「あやしい彼女」に続く。
「あやしい彼女」と同じく、ちょっと時空間を隔てた設定でしたが、2回あるってことは縁があるってことなんですかね。
とてもグレてた頃があるとは思えない、礼儀正しい、いいお嬢さん役だったですよね。
まあこれだから我慢しちゃって、かなり大きくなるまで虐待が続いてしまったのだが。
他人に対してきちんとしすぎていて、守景さんにも内面を見せてないので、今後付き合ってうまくいくのか不安ですけど。
一人演技も多く、ナレーションもとなったら、やはりちゃんとした力量のある女優じゃないと見てられない。
今後も順調に成長していって欲しいと思います。
登場人物はみな、いい感じの立ち位置。暮らしている感があったと思う。
バーバラさんだけは若干ファンタジーな感じでしたが。
……あのさ、バーバラ「婦人」っておかしいでしょ。
呼びかけに婦人は使えない。夫人であるべき。ミセスの訳語としての夫人。
婦人は女性という意味で、佐藤女性という呼びかけがあり得ないのと同じくらいバーバラ婦人ってあり得ない。
原作でもそう書いているんなら、わたしは小川糸並びに幻冬舎を信用しない。そもそも幻冬舎が信用出来るかというと微妙だが。
基本的には名前の方に夫人ってつけるのも、英語の使い方としては誤用ですし。
日本語だったらグレイゾーンですが。
はーたんが可愛かったね~。多分現実にそばにいたら狙いすぎてむしろ不快になるかもしれないと思うほど可愛かった。
まだ5歳?でちゃんとパパの色恋もわかっているとはオソロシイ。
パパもけっこう演技達者なんだよなあ、上地雄輔。まさかこんな才能があるとは……
あとはお名前は存じ上げなかったのだが、名脇役の草村礼子さん。出てくるとうれしいです。
今後ともますますお元気で、ご活躍下さい。
バーバラさんの家とか、古い文具店の店先とか、美術もいい仕事をしていましたね。
わたしはテレビドラマはくっきりした色合いの方が好きだが、
このドラマはノスタルジックな色合いがいい雰囲気を作ってました。
みなさん良い仕事でした。
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サウンドトラック。
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