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◇ 万城目学「とっぴんぱらりの風太郎」

万城目学には珍しい、普通の(?)小説。あまりにファンタジーすぎるということもないから、
初万城目の人とかには向くんじゃないか。……単行本700ページ超の時点でダメか。

忍者小説です。一応。なかなか忍者っぽいことしないけどね。まあ忍者小説を期待して読むと全然忍者小説じゃないから、
そこんところはムズカシイけどね。
京都・大阪を書いて滋賀も書いて今度は伊賀忍者なので、おお、今度は三重県か、着々と日本全国を制覇しているなあと思ったが、
結局のところ大阪の陣の話になるので、今回も京・大阪のことですね。

いつもと違ってわりとシリアスな話です。まあキーワードがひょうたんなので、基本はユーモラスに話が進むんだけど。
でもいつものトーンと比べて暗いよね。主人公が暗い。ユーモラスさはあるけど暗い。
あ、そしてファンタジー部分も……考えていたよりはあるな。ひょうたん仙人。
うーん、やっぱりこれを初万城目として薦めるのは無理があるか。

わたしはいつも程度に楽しんで読んだ。いつもよりも普通方向に楽しかったかな。
いつもは「まったくまたこんなマイルールを凝りもせずに書いて……」と思うことが一度や二度あるが、今回はそんなに。
もっとも、いつも通り、ストーリー展開をきっちりする作者ではないので、あれ~?という話の流れもないではないが。

この人の書くものには小さな人間への愛おしさ、小さい喜怒哀楽への切ない視点があるよね。
今回は素直にそれが伝わってきた。わりとマジメに書いているということかもしれない。
今まで「ホルモー」とか「鹿男」とかで、その奇天烈な設定で煙に巻いてきたけれども、
その照れがなくなってきたのではないかと思う。自己韜晦が薄れた。

まあ近く感じる作家ではある。

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