最初読んで、その辛気臭さに、これで600ページ×上中下巻は無理!止めよう!と思った。
だが、その段階のすぐ後から、展開が早くなって面白くなった。
途中で止めなくて良かった。具合が悪くて一日ゴロゴロしていた日だったので後半部分は一気読み。
しかしそれはそれは長い……。
山あり谷ありというか、登場人物がみな谷ばっかりに遭遇しているので下巻くらいではちょっと疲れた。
もうそろそろ収束してほしい、と思った。順風満帆なところも小説の旨味だと思うのだが、
作者は、谷でなければ小説の旨味たりえないと思っているところがあり、
善側の人間に、これでもか、とばかりに試練を与え続ける。
結局のところ、最後はメデタシメデタシになるだろうとわかる書き方なので、
なんぼかいいですけどね。もう少し幸せなところも書いて欲しかった。
アリエナさんが成功するまでの間も、ちゃんと描けば出世物語として楽しく読めた気がするが。
まあそこまで書くと本筋から離れますかね。
わたしが感心したのは、ここまで長編で、ドカンドカンと太い伏線を引きまくり、
それを上手に回収していること。
わたしは、伏線をここまでひかなくてもいい、全体のボリュームはもう少し少なくてもいい、と
少し感じたけれど、それはそれは執念深く伏線を引き、それをちゃんと回収しているのは偉い。
ここまでの大作になると、最後の方は手を抜きたくなっても仕方ないのに、
そこを、最初の頃と同じくらいの勤勉さで地道に書いている。
あまりにも回収が鮮やかすぎて、ご都合主義に見えるのは仕方ないか。
主人公はトム・ビルダー、フィリップ、アリエナ、ジャックといったところかね。
視点人物がわりあい頻繁に変わるが、あまり気にならなかった。
まあこれだけの長くて舞台も広い話、一人だけでは持ちませんよね。
「風と共に去りぬ」とかはあるけど。
だがウィリアム・ハムレイが、愚か者のわりに最後まで生き延びていて、それが不思議だった。
お母さんが死んだ後なら、あっという間に誰かに出し抜かれてもいいような気がするが。
前半部、ついうっかり愚か者として書きすぎたんだね。このくらいかな。気になるのは。
あ、それから、時代背景としては歴史上の人物が出てきているとはいえ、主要キャラクターはみな
架空の人物なんだから、これを歴史小説と呼ぶのは止めて欲しい。時代小説ですね。
時代は、まるっきり「修道士カドフェルシリーズ」と被る。女帝モードの名前が出てくると、
あっちの作品世界のことも思い出していた。なつかしいような思いで。
最初読むのが億劫だけど、わりとすぐ話が動きますから、最初で諦めないで吉。
ソフトバンク クリエイティブ
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小説になる前に、ドラマになったのを見る機会があったんだけど、やっぱり最初の辛気臭さに、
1話で視聴を止めてしまったんだよなー。もう一度放送したら、今度はもう少し見てみよう。
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