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◆ 若冲が来てくれました プライスコレクション 江戸絵画の美と生命 その2。

その1から続く。

「脇息に倚る遊女図」
完全に江戸風俗なので、これで明石の上と言われても困るが、
まあ見立てはあちこちでやっていることですからね。
この絵はね。この絵に限ったことではないけどものすごく線が細かいの。品がいいね。
以前、截金の江里佐代子の線の細さに驚愕したことがあったが、それに似たものを感じる繊細さ。
日本人って……どこまでも繊細さを突き詰める性分だなあ。まあ繊細さに限らないけれども。

山口素絢(やまぐちそけん)「美人に犬図」
これはデッサンとしてはなにがなにやら、という状態だが、
何といっても真骨頂は着物の透け感。真っ赤な襦袢の透け具合が美しい。
しかし帯もこんなにゆるりと結んで、胸もここまではだけていると、
実際はそうとう崩れた人だと思う。もう少しきっちりとした着こなしの方が好みだ。
この袖のうねりとか体のひねりとか、どこかしらマニエリスム。

長谷川派「義経記図屏風」
このコーナーの白眉はこれですね。これも細かくきっちり描いてるわ。
どこがどの場面かじっくり見てみたんだけど、静御前が鶴岡八幡で舞っているところと、
秀衡との対面くらいしかわからなかった。静御前は鎧兜で薙刀を振り回したりしないやろ。
そうか、矢は白壁に突き刺さるんだ。土壁だもんなあ。
さすまたや薙刀の得物の描き分けが面白かった。
たなびく金雲やほのかに咲く桜で、ぱっと見は雅やかに見える画面だけども、
けっこうあちこちで首が落とされ、血が噴き出してます。
ドラマティックな画題。しかも義経記といっても義経没落後の部分のみだから皆さびしい。
これは誰が持った屏風なんだろう。このテーマを望む人はどんな立場にいた人か。

酒井抱一「佐野渡図屏風」
歌にちなむとか、そういう部分での由縁しさはわたしにはないが、
とにかくこの絵は雪ですよ!!
雪がそれはそれはきれい。神々しくさえ見える。図録では再現度ゼロ。これは是非現物を。
人物は……何でもいい感じです。何もなくって、雪だけっちゅうわけにもいかんしね。

あとは、
鈴木其一「七夕図」←端正。ザ・掛け軸。牽牛がちょっと立派すぎだな。
鈴木其一「狐の嫁入り図」←今回鈴木其一はわりあいに来ているけど、みんな雰囲気が違う。
相当にいろんなものを描いた人のようだ。少し器用すぎる部分があったのでは。

亀岡規礼(かめおかきれい)「虎図」
虎は何枚かあったけど、毛なみの美しさと構図の斬新さでこれ。
他の人の虎も、毛なみはそれぞれに美しかった。
だがこれは、ほんとに毛皮を貼りつけたのではないか、というほどの艶があり、
縦長の画面にこのアングルで描きこんだというのが斬新。
形は若干おかしいけど、生き物の体の柔らかさがよく出ていると思う。

曾我蕭白「野馬図屏風」
今回見たのはこれの右隻。これはね。すごいですよ。
線がすごい。まるで書道のような線。あの蹄を見てみろ。
野性味溢れる馬たちを、金のベタ塗のなか、墨一色で描いたのも斬新だ。
これが普通の白い画面に墨なら、それなりに面白い一双にはなっただろうけど、
ここまでの面白みはなかったに違いない。

吉村孝敬(よしむらこうけい)「唐獅子図」
これも一目見て吹き出す類。なんだこのカワイさは!!
このままゆるキャラ決定ですよ。いや、むしろすでにどっかで使われてるんじゃないのか。
親獅子の困惑したような表情と(多分これは狙って描いたんじゃないと思うんだけど)、
仔獅子が4匹元気いっぱい。また彼らも親譲りの愛嬌のある顔をしちゃって……
ころんとしたフォルムは瓜坊を思い出させる。これもやっぱり買うよなあ。

あとは、
森狙仙「梅花猿猴図」←狙仙の猿。でもそこまでピンとはこなかった。他に何枚か有。
円山応震「駱駝図」←ラクダとダチョウの合いの子のように見える……。
土佐光起「薄に鶉図」←ウズラかわいー。そして若干美味しそう。
柴田是真「鷹と猿図」←鷹は見事。漆の黒がさすが。だが猿はむしろ要らなかった気がする。
波と岩の表現も不満が残る気がするな。

……また休憩入れましょうかね。まだ先は長いんですよ。もう1部屋分。
その3に続く。

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