クーンツ三作目。
……で思うのだが、もしかしてこの作家はひたすらこのパターンなのか?
初クーンツが「コールド・ファイア」、二作目が「ウォッチャーズ」、そして三作目がこれ。
たまたま三作、似たような傾向のものを読んだだけなんだろうか。
◎苦労して育った・悩み多き主人公が
◎自分が悪いわけでもないのに、強大な敵に追われる身となり
◎最愛の人と出会い
◎善良な人々の手助けを受けつつ
◎敵をやっつけ、ハッピーエンド。
面白くない、というわけではないんだけど。でも3作目ともなると「またこれかい?」と首を傾げたくなる。
いや、ワンパターンが全てきらいなわけではないのだけれどね。
でもシリーズ物でもないのに、ここまでテイストが同じだとなあ……
まあ総じて、読ませる作家ではあると思う。時々まどろっこしくてちょっと飛ばしたけど。
で、泣ける部分も、ラブラブもちゃんと用意していて、キャラクターもけっこう魅力的。
(売れどころを分かってる感じだなー。)
今回のライトニングでは、双子のキャラクターが良かった。
しかし「ふーん」で終わってしまう。感情移入が出来ない。どうも、紙芝居を見ているような気分。
紙芝居は紙芝居的に良さはあるけれど、没入はなかなか出来ませんよね。
そもそもサスペンス(ホラー?スリラー?)って、わたしは好きだったろうか。
ジャンル名で読むわけではないので、あんまりサスペンスっぽくない本作が、
「サスペンスだから」嫌いということもないはずだが、こういう勢いで押す類はなー。
あまり魅力を感じない・のだろう・きっと。
ま、ダ・ヴィンチ・コードあたりと違って、ご都合主義が気になるということはなかった。
めんどくさいので、タイムパラドックスの辺りはわりと読み飛ばしたけれど、
一応それなりにルールを考えているのだろうという感じはしたし。
ただ、歴史上の人物をほんのちょっとだけ登場させるのは……どうかなあ。
葉巻好きの人はそれでもなかなか魅力的だったが、口髭の人は……
あそこで登場させたことによって、(しかも魅力的でも印象深くもなかったことによって)
興趣を殺いだ気さえする。蛇足。
三作に共通して言えることだが、話が長すぎるのもなー……
「ライトニング」は一冊だったけど、けっこう上下本も多いから。「ウォッチャーズ」はまだいいとして、
「コールド・ファイア」が二冊である必要はない気がする。
半分か、せめて3分の2くらいに縮めて書いてくれないものだろうか。
でも、クーンツのいいところは、何と言ってもハッピーエンドで終わるところですね。
わたしは正直、バッドエンドの小説の存在意義が今ひとつわからなくて。
めでたしめでたしで終わるからこそ、(日常ではなかなか得られない)解放感があって、
それがフィクションの(一般的な)価値なのではないか。
(他の種類の価値も、もちろんありますけれどね)
これが後味悪い結末ならわたしは絶対読みませんよ。
つまり、読んですっきりする、という意味では、いい作家なのかも。
リストアップしている本はあと何冊かあるけれども、全部読むまでのお付き合いは出来ないかもしれない。
でも、5冊目でようやく「面白かった!」と思った宮部みゆきの例もあることだし、
あと2冊は読んでみようかなー。うん。
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