あれ?澁澤龍彦ってこんな風に書く人だっけ?
澁澤龍彦を以前に読んだのは中学生くらいの時だった気がする。数冊、わりと面白く読んだんだけど、
それ以降は目が合っても「ああ、澁澤ね」という感じで流していた。
嫌いじゃないけど、読むのは後でいいと感じる作家。
この度縁あって「高丘親王航海記」を読んだのだが、文章がなんかずいぶんおっとり……
と感じて、肩透かしを食ったような気がした。
わたしの中では、もっとしつこくておどろおどろしく、怪奇!幻想!というイメージだったから。
あれれ?と思って昔読んだ記憶のあるエッセイを、ぱらぱらと見返すと、
この人、文章自体は意外にさっぱりしてるんですね。(物によるだろうけど。)
ただタイトルと装丁がああいう風だから、実際以上におどろだと思い込んでいたらしい。
この作品が遺作、ということもあるのかな。
六十歳前で亡くなったらしいから、枯れるまでには至らなかっただろうけれども、
どことなくほのぼのした軽みがある。肩の力が抜けているというか。
ページ数に比して、小品感が強い。
澁澤のクセというか毒というかを覚悟していたせいか、多少物足りなかったような。
良くも悪くも最後までさらさらと進んで、立ち止まる部分がない。
史実と(といっても骨組みだけだが)空想の混ぜ方なんかは面白いと思うけど。
薬子のイメージを響かせるのとか。全体的にユーモア感もある。
しかし、この本でどこが一番良かったって、装丁が良かった!
文芸春秋版。図書館で借りたのだが、今まで誰も読む人がいなかったのか、
金色の布装丁がぴっかぴか!そこに背表紙に金文字でタイトル、表紙にリポンデザインで
Shibusawa Tatsuhikoと書いてある。それだけ。この派手な色とデザインの簡素さがいい!
実は本来は箱もついているらしく、この箱もなかなか。
白にセピア一色でどこか物寂しいようなエキゾチックな南国の風景を描いている。
あっさりしていて好きだ。なかなかやるな、という感じ。
最後の最後にこんな本を遺したのが、しゃれている。
この場合、装丁に実際に関わったのは、おそらく本人自身より回りの人々であったろうとは思うが、
そうさせた澁澤もお手柄である。本人の気持ちは知らず、良い〆であったのではないか。
画像がないのが残念。
コメント
Unknown
>嫌いじゃないけど、読むのは後でいいと感じる作家。
ああ~すごくわかる!!!私もです!!!!
中学以来読んでません(笑
今度探してみます。
Unknown
そんな部分が一致する人がいるとは思いませんでした(^_^;)。
何冊か手元にあるんですけど、とにかく図書館本の消費?
(正しくは読破ですね)が先で、なかなか取り掛かれないよー。
ところで、篠田真由美という作家がいるのですが、
彼女が書いた「龍の黙示録」というシリーズは、
澁澤龍彦を主人公としてイメージしているものだと
風の噂で聞きました。
(読んでないので、真偽のほどは定かではない)
いずれ読んでみようと思ってます。
Unknown
う。字、間違った。
「竜の黙示録」だった。
しかし、わたしの記憶によれば、
澁澤龍彦はこだわりを持って「龍」の字を使ってたんじゃなかったかなあ。
だったら龍の字を使ってあげれば良かったのに。
まあ、風の噂&あやふやな記憶なので、
声高に主張も出来かねるけれども……