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◇ ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」

これはベストセラー……らしいが。

(内容に触れています)

途中で止めてもいいなあ、くらい。大して面白くなかった。
わたしはルネサンスアートも好きだし、トンデモ風味の宗教関係も嫌いじゃないし、
図像学や暗号なんかにもわりあいワクワクする方で、この本を読むに
最もふさわしい読者なのではないかと予想していたのだが、全然ピンとこなくて。

っていうかねえ。テンポの良さがこの本の身上なのだと思うし、それがあったからこそ
売れたのは重々承知だが、話の展開に無理ありすぎませんか。
ほとんどのことがほぼ24時間くらいで起こっているんでしょう?いやー、無理でしょう。

ご都合主義。

ここまでご都合主義だと全くノレません。ご都合主義が全て嫌いなわけではないんだけれども。

映画の「ナショナル・トレジャー」に大変近いものを感じる。さすがにあれよりは少々マトモだが。
テーマがテーマなんだから、もっとじっくり迫って欲しいなあ。何でもかんでも
「昔、祖父は……」で解決するの、やめてもらえませんか。
国家権力に追われつつ、暗号を解読し、秘密に近づいていく、なんて出来ることじゃない。
いや、そういう立場に立ったことはないけれども、出来ないと思う。
全体的にもう少し重厚な話だったらなー。おぞおぞとした雰囲気も出ただろうに。
そういう方向をわたしは期待したかった。せっかくトンデモ宗教系の話なんだからさ。

ダ・ヴィンチをタイトルに上手く持って来た。
でもあんまりダ・ヴィンチじゃありませんでしたね。「岩窟の聖母」はそれほど重要な部分じゃない。
「モナリザ」はもっと重要じゃない。一応「最後の晩餐」は多少関わっては来るけれども。
タイトルの勝利といっていいでしょうね。
これが「聖杯の暗号」とかいうタイトルだったら、少なくとも日本では今ほどは売れない。

「あと二人」という台詞に微妙にアンフェアなものを感じる、が、そこはまあいい。
しかし最後がなあ。「着地点がそこかー」と白けた。クライマックスは黒幕が誰か、と言う点で、
その後はつけたしでいいけれども、ちょっと力抜きすぎではないか。
これは偏見だが(自覚はある)、いかにもアメリカンっぽい単純明快さ。
おまけにハリウッドが愛して止まない「ヒーローとヒロインが最後にくっつく」を忠実に踏襲しやがって。
こんなテーマで、わざわざそういう方向に持って行かずとも良いのに。何日間の話だよ。
白ける。とても。

ところで、「聖杯は寓意だ」と散々言っておきながら、最後の最後、ああいう風に終わるのは一体どうなの?
わたしは蛇足だと思うけどなあ。ただでさえとってつけた感がありありなのに、駄目押しというか。

ただ、ロスリンの教会には行ってみたいとちょっと思った。
そしたら、角川はちゃんとサイトも用意しているんですね。
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200405-05/
写真が重要な場所を網羅していて面白い。良い営業戦略です。

でもこれは映画なら、もしかしていいかもしれない。テンポの良さが活きるかも。
……下手すると「ナショナル・トレジャー」の二の舞ですけれどね。骨格は丸被りだし。
役者は……そうか、ジャン・レノとオドレイ・トトゥか。とりあえず見てて楽しい役者だ。
ハリポタも原作はキライだが、映画はまあまあ好きなので、同じように楽しめるかもしれない。

ダ・ヴィンチ・コード (上)
ダン・ブラウン 越前 敏弥 角川書店 (2004/05/31)売り上げランキング: 331

ちなみに内容だけだったら、「レンヌ=ル=シャトーの謎」の方がおすすめ。
あの厚さでだいぶ評価は下がるが、面白い部分はあった。
ダ・ヴィンチ・コードとは関係ないけど、「トリノ聖骸布の謎」はけっこう面白かった記憶がある。
わりあい「なるほど」と思えたような。

レンヌ=ル=シャトーの謎―イエスの血脈と聖杯伝説
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トリノ聖骸布の謎
トリノ聖骸布の謎

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コメント

  1. どるしねあ より:

    Unknown

    はじめまして、コメント失礼します。

    私も同意見です。
    友人に面白いから!と薦められて、
    なぜにいまさらこんな本を読まねばならぬのだ?
    と思いました。
    会話だけで話が進むのもウザったいし。

    まぁ、超常現象のように本が売れるのはいいことですよね、きっと。

    ではでは、またオジャマします~★

  2. uraraka-umeko より:

    Unknown

    わたしは読む前、けっこう期待していたので。
    ベストセラー本には数々裏切られてきているのになあ~……。
    (いや、嘘だ。あまりベストセラー本は読んでいない)
    しかしどうしてこんなに「面白い」って言われているのか、さっぱりわかりませんねえ。
    いろんなところからいいとこ取りをしてるような小狡さを感じる。のでイヤだ。
    売れる小技を知っているってことなんでしょうね。
    ……本文でけっこう抑えている毒舌が、どんどん発展してしまいそうだ。
    やめときましょう(^_^;)。