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◇ ジェフリー・オヴ・モンマス「ブリタニア列王史」

読む前は、それこそ「ローマ帝国衰亡史」みたいなのを想像し、また何巻もあるんだろうなあ……と
思っていたら、単行本400ページとは言え1巻しかないので嬉しかった。

しかし、読みやすくはないですが。

実は最初の一行でつまづいた。ジェフリー・オヴ・モンマス自身の献辞部分なんですけどね。
日本語がおかしかったので、とりあえず解説を読んでみた。
解説はまあ、コチコチ硬めとはいえ普通だな。地雷っぽくはない。

しかし本文も、生硬な文章ではある……。
……これって中世の、完成されてない英語を日本語に移そうとしたせいなんだろうか。
それともやっぱり訳文として生硬なだけ?ちょっと迷いどころですな。

訳者は瀬谷幸男。この名前で検索すると引っかかって来るのが、中世英語分野か、
医学系なんだよね。同じ英語とはいえ分野的には相当に離れている。
これは同名の別人なんだろうか。もし同じ人なら、
「医学分野と中世英語を掛け持ちするのは無理がないか……」と言いたいところなんだけど。
普通はやらないんではないか。医学分野の方は複数人訳者がいる本が多いので、名前だけ貸してるとか?
他が全部医学で、「ブリタニア列王史」のみ中世とかだったら勇み足ってことにしてしまいたいが、
中世分野の訳書もけっこうな数出している。うーん。

副題で「アーサー王ロマンス原拠の書」とあり、それは間違いではないが、
アーサー王を求める人がこの本を読んで面白いかというと、そうでもないと思う。
要は、面白いか面白くないかでいったら、別に面白くはないんです。
言うたら……言うたら……日本であてはまるものが思いつかない。
「日本書紀」と「小説神髄」を足して2で割ったような。……って、全く例えになってませんな。

まあ面白かった部分といえば、地名かねえ。
あちこちの場所の古名が出て来る。
テムズ川がタメンシス川とか。コルヌビアがコーンウォールとか。バドンはバースとか。
トリノヴァントゥムがロンドン……というのは、間にいろいろ変更が起こっているので、
直線では繋がらないようだが。

あとは……人名だけがつらつら連なっていたような。
あ、リア王の元ネタ?もここに載っていた。
……そんなもんかな。面白さを特に期待せずに読むのが推奨。

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