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◇ 関川夏央「石ころだって役に立つ」

この人の書くものはエッセイなのか?小説なのか?ってのが多いなあ。
それがいいやら悪いやら。

本作は多分エッセイ……でも書きぶりがちょっと大仰なので、小説なのかなーと思わないこともない。
大仰なのはマイナス面だけではないけどね。ナナメヨコ的ではあるけれど、
その斜め横の部分を取り去ったら、書いていることは相当に感傷的なので、
あんまり実体験!として書かれると、ちとツライかもしれん。
大仰に、小説仕立てで書いているからこそ読めるのかも。

こういうの、もし若い頃に読んでいたらイヤだろうなあ。
「いい歳をしたオッサンが何言っとんねん!」とか思いそうだ。
高校時代に読んだ太宰治の、そのべたべたな甘えぶりに拒絶反応が出たように。
しかし人間、齢を重ねて来ると、大人になってもさっぱり大人にはならないものなんだと
わかってくるので、……その感傷に同意が出来たりもする。

須賀敦子についての一文は良かった。
わたしは須賀敦子、気にはなりつつもどうも初期の反感が完全には消え去らない作家で。
何が反感かというと、イメージが、多分あまりに文学的すぎたんだろうな。
単行本が平積みになって、表紙の趣味も良く、タイトルが「ミラノ 霧の風景」……
嫌味なほど文学的。ま、当時はコドモですから。
関川が描く須賀敦子は、彼女自身の著作から感じられる本人よりも普通の人で、
普通のかっこ良さで良かった。

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