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< ステキな金縛り >

面白かった!

三谷幸喜、わたしが知らないうちにいつの間にか映画を撮っていたんだなあ。
MOVIXのスケジュールはそこそこチェックしている筈なのに、全く気付かなかった。
公開が始まって初めて知る体たらく。テレビCMも山ほどしていたらしいけど、
テレビは基本的に録画してCMを飛ばしながら見るので、世の中の動きがわからない。

設定からして、これが面白くないということはあり得ませんよねえ。
だって「幽霊になった落ち武者が法廷で証言する」ですよ!その落ち武者役は西田敏行ですよ!
これはハマるだろう。たとえ相手が深津絵里でも。(わたしは深津絵里、いまいちなのだ)

実際に見たら、期待通りの面白さ。
というより、期待して見て期待通りの面白さだと思った場合、期待以上の面白さなわけですね。
人間、期待通りだと軽く物足りないものですから。
過去の三谷作品に時々あった“イタイ”部分も、今作はほぼ無く。
安心して見ていられた。2時間半、長くない。

以下ネタバレ含む。

最初に、お、と思ったのは、洋館の壁の質感。
もう絵に描いたような“孤立した洋館”で、しかも嵐の晩(あれ?嵐じゃなかったかな?)、
毒々しい感じの美女(あまり顔がはっきり映ってないが)が、夫の浮気現場に乗り込む。
いかにも!というあのシーンで、あのざらざらした壁の質感は大成功だ!
ウィリアム・モリス風のみっちりした壁紙、という選択肢もあったと思うけど、
やはりあの凸凹が不安感をあおる。

そして、あんな暗い中でごちゃごちゃやって、どんどんシーンを流していくので、
さっぱりワケがわからんじゃないかと内心文句を言っていたが、
……そうですね。ワケわかんなくていいんですね。
ここをあんまりじっくり流すとテンポが悪いしねー。

いやもう、山本耕史の衣装及びメイク及び演技は。
見た途端にニヤリとするね。何シーンか出て来たけど、ブレがないねえ。
彼はいい役者だと思うので、三谷作品で一度はがっつり使って欲しいけどなあ。
チョイ役で、いつも残念。

深津絵里、登場シーンがすっぴん(多分)のどアップとは恐れ入った!
38歳でそれが出来るならエライ。
ただ、マキオ君と深津絵里の関係がファーストシーンではよくわからなかった。
草の写真も飾っているしさ。一瞬、親子も有り得るのか?と。
いつもはその可愛い演技が好きではないのだが、今回は素直に可愛いと思った。
25歳でいけるぞ。ただ、その可愛さが「博士の愛した数式」とかだと裏目に出ているわけで。

マキオ君は、……わりとどっかで見たことある感があり、常連の役者の一人かなと思っていたら、
お笑いの人なんですねえ。しかし今回の役柄は良かった。お笑いの人は芝居がいい人が多い。
人にも合っていた。

阿部寛は相変わらず。好きですけどね。
でもシリアスな役も意外にやれるんだよねー。時代劇も出来る。意外に。
……って、モデル出身という偏見からはそろそろ解放してやるべきか?
だが「TRICK」の相変わらず感がけっこう長く続いたので……
ガタイがいいのでスーツが似合う。スーツ男子好きのわたしには目の保養。

この作品で一番笑った所はどこだったかというと、阿部寛のタップダンスシーンなんだよな。
すごいベタなんだけど、それまでの小さな積み重ねが、あのシーンでクロスオーバーしたというか。
腹を抱えて笑ってしまった。あれこそ「TRICK」っぽいよ。
わりと阿部寛周辺は小ネタが多くて楽しかった。
彼が食べていた笛ラムネ(?)が、後であんな役割を果たすとは。

小林隆。って役者名が定着していない。顔はよく見るんだけどなー。
今回の役柄はあの温顔がものすごく活きてたな。それなりのかっこさせると
上品に見える人なんですね。いつもはナサケナイ感じが強いけど。
いい役柄で嬉しい感じがした。

三谷幸喜のセットはつねにわたし好み。「THE 有頂天ホテル」も「ザ・マジックアワー」も。
今回の法廷のセット及び裁判所の建物の外観・廊下ロケは超好み。
しかし外観と廊下がどの建物か心当たりが出てこないのが忸怩たるところ。
廊下は、タイルの使い方がライトっぽいよねー。
外観は、色々なテレビドラマに使われてきた建物だと思うのだが……。
法廷セットは、何の気なしに見ていたが、ああいうすり鉢型の法廷は珍しいのか。
裁判官控室も上品な木製の作りだし。イギリス風ですよね。

あー。もういくら書いても終わりそうにない。

戸田恵子と浅野和之が!ちょっとしか出ないけど、すごい変な役。
すごい変な役だけど、それをごく普通に演っているのが、上手さというのか当て書きの功か。

劇場で見ながら思ってたんだけどさ、これは実は思いっきりツッコミを入れたい!と
切実に感じさせる部分において、劇場鑑賞より自宅でのDVD鑑賞の方に向く作品なのかもしれない。
……と言ったら製作側に悪いが。
浅野和之に「お前か!」と裏拳でツッコミたかった。

西田敏行は、やはりこのコミカルぶりが必須。「THE 有頂天ホテル」のシリアスな役は、
ちょっと居心地が悪かったもの。
予想からちょっとも外れない落ち武者デザイン。しかし英語も使う。
(多分アドリブで)自ずからツッコミも入れる。自由自在。いいなあ、西田敏行。
だが脚本的に、姫発言は頂けなかったぞ、三谷幸喜。陳腐な感じがする。

中井貴一。顔的にあまり好きな人ではないが、今回の役どころは面白かったー。
“エアドック”最高!あとはピンポン玉も……あんな真面目な顔でよくやれたな。
中井貴一のスーツはネクタイともども癖があって、個人的にはあまり好きなコーディネートじゃ
なかったけど「いるよな、こういう組み合わせが好きな人」と思わせてくれるリアルさ。

浅野忠信が浅野忠信だと気付かなかった。彼も化けるなあ。
小日向さんは、今回は珍しくクール!いやでもやっぱり役者だね~。どんな役でも出来る。
彼の衣装の質感が特異で良かった。
市村正親は完全にお笑いキャラ。ぜひ篠原涼子と同じシーンで出させたかった。
篠原涼子は「THE 有頂天ホテル」と同じ役柄だそうで。
佐藤浩市も「ザ・マジックアワー」と同じ役柄だそうで。こういう遊びが楽しい。
梶原善もついでだから、芸能人のマネージャー役で出しても良かったのに。

深田恭子に似てるなあ、でもこんなチョイ役で、と思いながら見ていて、
胸の大きさでやはり深田恭子、と認識したのは本人的には不可でしょうね……。胸で判断するな。
草は、最後を持っていったんだから美味しい役どころと言えるかもしれない。
しかしあれで父娘というのも微妙。まあ「あれヤンキードゥードゥルなのに!」は台詞が笑えた。
「スミス都へ行く」「素晴らしくかな、人生」わたしはどちらも見ていない。
生瀬は市村とはまだ別の意味で完全なお笑いキャラ。
ファミレスのシーンは笑ったさー。やっぱり奴はあなどんわー。

……そして大泉洋が出てたって知ってました?
それも、本編ではなくエンディングの写真の中の一枚、「勝訴」という紙を掲げている人。
しかもご丁寧に紙で半分顔が隠れているんだよ!
そこまでするなら、なぜ出る、大泉!
だったら、深津絵里を轢きそうになったトラックの運転手、
深夜の公園をパトロール中の警官の、三役くらいやって欲しかったなあ。

他にも色々言いたいことはあるような気がするけど、とりあえず一通り気が済んだので、
こんなところにしておいてやろう。一体何のためにここまで長文。
だって面白かったんだもの。

しかし、今日映画を見に行って良かった。
そうでなければ、スピンオフのドラマ「素敵な隠し撮り」を見逃すところだった。
まあ録画して、あとから見るんですけどね。

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