こ れ は オ モ シ ロ イ 。大変笑える。
まあ言うたらそれでもラノベやろー、という先入観は確固としてあったわけだが……
なので、地雷踏む気満々でしたよ。タイトル的にも、設定だけで話を引っ張っちゃうような
薄いストーリーなんじゃないの?と思って。
久々に性質の良いラノベを読んだ。そもそもラノベを貶し言葉として使ってしまうように
なったのは、ラノベとして出版されるものの質がどんどん急落してしまったからであって……
初期の「ラノベ」(ライトノベルという名前がつく前の、と言ってもいい)は、
純粋に読んで楽しい、笑えるものだったんだよなー。
文章的には、ぎりぎり可。
ここは句点が欲しいけどなー、と思うところは多々あったが、話し言葉のリズムを
そのまま写したかったんだろうから、それは作者の選択で。
ただし言葉の使い方は、けっこう恣意的。というか仲間うち的。
「入る」「折る」「畳む」……その他いくつか、書き言葉としては若干首を傾げる表現あり。
言葉が足りず、意味がわからないところが数ヶ所あった。
同表現の多用も多少気になる。堂上さんは、憮然・仏頂面をしすぎだ。
言葉も乱暴は乱暴なので、この辺りは個人の許容範囲の問題だねえ。
色々設定を作りこんでますよ。近未来の図書館の現状と世相について。
基本、粗さがしをしながら読む自分が、途中で粗さがしを止めたくらい細々と書いている。
(細々ぶりに食傷し、後半その辺はほぼざく読みだった。どうせ完璧はありえないのだから、
こういう風に諦めさせるのも手だなあ)
作者はミリタリーオタクらしい。わたしにとってはその部分は大して旨みはない。
でも図書特殊部隊のディテイルとして役に立ってるしな。分量もそれほどではないし。
シュミを延々書くだけで悦に入ってるだけの物とは一線を画す。
その上で、これは明確にキャラクター小説です。
ま、少女マンガ的と言ってもいい。恋愛部分多め。しかもかなり甘甘な上に直球ストレート。
ラブコメですな。これを男性は読めるのかいな?どうだろう。
この部分を楽しめる層が、この本を一番楽しめる層だと思うが。
逆に「焚書」というキーワードから「華氏451度」的なものを予想して手に取ると、
それは不幸な出会いとしか言いようがない。
ハードカバーであることとか、装丁の微妙なラノベ臭の少なさ(日本語ヘンだが)も
不幸な出会いを作ってるかなー。しかし「今までこういうのを読んだことがないけど面白かった」
という出会いも中にはあるだろうから、まあそれはカンベンしてもらおう。
主要キャラクターはみんないい人で面白い奴で。
それが白々しいと感じる読み手も絶対いるはずだけど、主人公一人だけがいい人、という話よりは
格段に好き。正統派理論家である小牧さんは、笑い上戸なところが多少目新しいキャラだと思う。
柴崎と笠原郁の友情もけっこう好きなんだよなー。
このくらいの距離感とかなれ合いとか、漫才とか。好みだ。
能力を認めた上での人間関係は、言わば共犯。それは友情の場合も恋愛の場合も、
ちょっといいもんだと思います。
ストーリー的に、柴崎が笠原の引き立て役に終わっていないのが嬉しい。
主人公ばかりに目が行っていると、うっかり「タイプの違う登場人物」を出すためだけの
キャラクターに堕すということはありがちだし。
……ってか、正直言いますと、堂上さんには惚れますわな。あれだけ完璧にフォローされたら。
映画「アマルフィ」の感想でも言ったことだが、強い女性と、それを「しょーがねーな」と言いつつ
フォローする男性の関係性はわたしのツボだし。
しかし苦笑しつつ言いたいが、堂上さん、朴念仁にもほどがあるってもんだよね。
不自然過ぎですよ、作者。
一つ望むとしたら、主人公である笠原郁にもうちょっと面白い属性を……
少女マンガ王道の流れを汲む典型的な「どじっ娘」――ってだけでは物足りない。
バカ娘という設定は仕方ないにしても、ちょっと極端すぎるしなあ。
司書資格持っているなら、分類でそこまで苦労することはありえないと思うが。
図書館利用者なら、だいたいの分類は頭に入っているくらいのもんだろう。
わたしも図書館憲章は目に留めたことがある。
「ほほー、大きく出なさってるなあ」と揶揄半分、微笑ましさ半分で、半笑いで読んだ。
そう、この憲章が誰の目にも触れないことこそ意味のあることなのだ。
これが誰でもが知る事柄になったら、その時世の中は一体どうなっている?
最初の万引事件のシーンで、なぜか泣けた。
こういう状況に自分が陥ることは有り得ないし、その時が万が一自分に来たら
「はいはい」つってその本を良化特務員に渡して終りなわけだが、
このシーンから感じられるのは、
どんなに愛しい本があるか。
そういうことよ。ここ、「十年来の児童書」という設定が活きてるなあ。
子供の頃好きだった本というのは、今読んだ本とはまた違う。
年月が発酵させて、思いが積み重なって、なんていうかねえ、――きらきら輝く。
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世のラブコメ好きは読むべし!推奨。
……いや、別にわたしがラブコメ好きというわけではありませんが。
ただ、最後のショートストーリーは、いくらなんでもカユイわ(^_^;)。
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作者である有川浩が、以前「WEB本の雑誌」でインタビューを受けていた。
実はこの作家、自分と過去の読書傾向がかなり被る。
ということは、――この話って、つまり「星へ行く船」と「ブラックキャット」の合わせ技か!?
ま、だからといって話の価値は下がらんけどね。ただし影響を受けているのが如実に
表れていて苦笑する。まさにあゆみちゃんと太一郎さんの関係性と同じだし、
主役のキャラはそのまんま千秋ではないですか。
ただなー、あまりにもラブコメすぎて、これを6冊読んだら、
……飽きるんじゃないだろうかと思ってコワイ。
すでに1巻で、ただでさえシチュエーションとしては同じことの繰り返しなのに、
これを本編4巻分別冊2巻分続けるつもりか、作者は。
それを考えると、――この本は今、本編4冊をまとめて人から借りている状態なのだが、
2巻に進む勇気がなかなか出ないのだー。どんだけヘタレでしょうか、自分。
マンガにもなっているらしい。アマゾンで表紙を見ただけだが、
しかしこれを少女マンガの絵でやられるとオモムキというものがないような。
むしろもう少し少年マンガっぽい絵の方が良かったと思う。
たとえば、まあ高橋留美子に描けとは言わないが、目鼻のバランスがあのくらいの
現実感であった方がアリガタかったかなあ。
ああ。なるほど。アニメはこういう絵なのか。このくらいの絵がわたしのラインだなあ。
だが、微妙に体型が無骨。――注文が多すぎるか。
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