この本は愛書家が嵩じて古書店主になった元刑事が主人公。
本好き、にも色々あるが……色々あっていいのだが、
愛書家というのは、その中で微妙に距離を感じる人種だ。
物体としての本が好きな人たちってことですかね?
この本を読んでいると、どうもそういう感じが強くなる。
なんか値段のことばっかり書いてあるんだもの。
わたしも「電子書籍は嫌い」と思う程度には、物体としての本に執着はある。
いや、執着とまでは言えないな。本を伏せて置いたりするの平気だし。
だいたい「字の本は文庫で」というモットーの自分が、初版本がどうのこうのという世界に
親近感を覚えるわけがないのだ。
スティーブン・キングをくさす、とか、アーウィン・ショーの評価が低いことを嘆く、とか、
それなりに作家についての言及もないことはないけど。
でも有名どころは別にして、アメリカの作家名なんてよく知らんからなー。
その辺ではあまり楽しめない。古書業界とか古書の蘊蓄は楽しめるけど、
それを最大の旨みとするならば、1冊600ページ近い分量はちと長すぎる。
ただでさえ翻訳物は読むのに時間がかかりますしね。
100ページ1時間以上かかってるんじゃないか。うーん、1冊に6時間はツライ。
キャラクターは押し並べて魅力的。……が、類型的と言えば言える。
どこかで見たような人々。
そう感じてしまうのはアメリカミステリに対する偏見かなー、という自覚はあるが……
でもクーンツあたりの主人公とそんなに変わらなくないですか、クリフ・ジェーンウェイって?
クールに見せているけど熱血漢で、正義感、腕力とも強い。女にもてる。ありがち。
まあねー、そんなに斬新なキャラクターってそうそう生み出せるものではないけど。
あっと驚くストーリー上の仕掛けも特になく、地道な話。
やはり古書の蘊蓄を読むために6時間は長すぎる。この2冊でいいとしよう。
当然ながら、愛書家の自覚がある人にはお薦め。同病相哀れむという意味で楽しめると思う。
あ、そうそう。訳者に文句を言いたい。日本においては、ホメロスが書いたのは、
やっぱり「オデュッセイア」だと思うよ、「ユリシーズ」ではなく。
「ユリシーズ」を書いたのはジェイムズ・ジョイスだけにしておいて欲しい。
じゃあ、ジュリアス・シーザーが不可なのかというとそんなこともないのだが……
ここらへんは既得権というか、慣習法というか、不文律で。
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