タイトルから、ホームレスの人たちをテーマにして現代日本の世相云々、という話かなー、と
無意識のうちに思っていたが、これが中世キリスト教異端の世界を放浪者の視点から
さらっと書く、という予想を裏切る展開。
よく考えてみると、堀田善衛の頃はホームレスという言葉はないか?
まあ堀田善衛は、読んでびっくり、ということは珍しくないですけどね。
「ミシェル 城館の人」というタイトルで、モンテーニュの話だと誰が思うか……
何度も書くが、堀田善衛は自由自在。
カタリ派のことなんて――小説に書こうってんだから、それでもけっこう調べたんだろうに、
ふわーっと書くもんねー。通り一遍としか言えないくらい。……通り一遍なのかもしれんが。
視点人物である“路上の”ヨナと、ヨナに観察される対象である“主君”アントン・マリア。
どちらもよく書けている。前者は面白く、後者は気持ちよく。
うーん、“ふわーっと”と言ったが、本作は堀田善衛には珍しく、
ところどころに知識部分があるかな。ラテン語を上手に使っているし。
「ラテン語だぞ!」と主張しない使い方。能ある鷹は爪を隠す、的な。
って、また根拠なく褒めている。やっぱりひいきだなあ。
盲目のペルフェクティ(=完徳者――カソリックであえて例えれば司祭みたいなもの)の
イメージがくっきりと残る。顔まで映像で出て来そうなほど。
ふわっと書いてここまで残るのは、イメージ喚起力としてエライ。
――って、もしかしてこの顔は「トロイ」におけるピーター・オトゥールのプリアモス王か?
あのプリアモス王は盲目でしたっけ?自分の中で、どこで結びつくんだろう。
カタリ派について詳しく知りたい向きには薦めないけれども……
(詳しいと言えばむしろ箒木蓬生の「聖灰の暗号」の方が。しかしわたしはあっちは作品としては
それほど評価しない)
何かもっと他に読んだ気はするけどなあ。「レンヌ・ル・シャトーの謎」?
これ読んだの相当昔だから、カタリ派のことに詳しかったかは覚えてないなあ……
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