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< マルタのやさしい刺繍 >(テレビ視聴)

珍しくスイス映画(?)。人生初ではなかろうか。
スイスが舞台という映像自体もほぼ初めてかもしれない。カレンダーとかで見る
いかにもスイスの小村、という場所が舞台。新鮮だった。

で。ま。作品ですけどね。

良いは良いけど……止まり。
どっちかというと好印象で、後味もいいし、見るのを勧めるのにやぶさかではないが、
うーん、突出した魅力は……。

むしろこの映画が社会現象になるスイスという国は、一体どんな国なんだろう、というところに
興味が湧いた。日本の映画社会で妙にもてはやされた「三丁目の夕日」と似たような立ち位置なのか。
ノスタルジー&ハートフル&気づき、ですか。
うーん、どうも見方が皮肉になってしまう。

いつの時代の話なのかというのが、見終わった今でもよくわからない。
画面の時代色が「ニュー・シネマ・パラダイス」を思わせた気がするので、
大戦前後かなーと何となく思いながら見ていたが、いつの間にか話にインターネットが出て来るしねえ。
地域リーダーというのがよくわからないけど、個人的なイメージでは、
ナチス影響下の政治的集落リーダーを想起して、やっぱり大戦前くらいの感じだなあ。

ああ、そうか。テレビが全く出てこない、影響を感じないのが不自然なんだ。
テレビが社会を平均化する力は強い。
今は全国津々浦々、良くも悪くも情報の共有化が進んでいる。
早い話、もし一家に一台テレビがあるんなら、50代くらいの息子世代があんなに頑迷固陋なのは
おかしいと思うんだよ。

まだ高齢者が慣習に囚われるというならわかる。価値観というのはなかなか変えられるもんじゃない。
でも映画では息子たちが頭ごなしにランジェリー・ショップに反対して、
そのわりに高級老人ホームの老人はすんなり受け入れてたでしょ。
それはないんじゃないか。

職員が妙に理解あるのも納得出来ない。頭の固い人物として描かれてなかったか?
おじいさんがブラジャーやぱんつに刺繍の内職をするかねえ。
邦タイトルが「マルタのやさしい刺繍」なのに、本人は刺繍をちょっとしかせず、
トーシローに下請けに出すって……
それを売り物にするって、どうなの?売り物に出来るレベルなの?

頭の固い息子の娘が、突然舞台上でランジェリー・ショーですか?
いや、それは単に価値観の相違とかではなく。もっと根本的な、
相当大きな段差を飛び越えないと出来ないことだと思いますよ。

と、いろんなことがひっかかってしまったので、白けた部分は多々あったのであった。

まあ、こういう類の映画は好きな方なんだけどね。おばあちゃん物も好きだし。
見てて楽しめたんだけど、さて、では映画として、と考えるとどーもあんまり褒める気にならん。
息子たちも、単なるイヤな奴でさ。ほんとはもっと彼らなりの正当な主張があるわけでしょ。
牧師は「母の気持ちもわかりつつも、やはり自分の職業を考えて積極的に賛成出来ないジレンマ」
という描き方も出来たわけだし、地域リーダーだって、本来「農場と自分の時間とめんどくささと
親への愛情の板挟み」という部分があるのが普通でしょう。この辺何にも描かれてない。

一番イージーなストーリーを選んでしまったな、という気はするかな。
シンプルなストーリーは好きなんだけどね、わたしは。
でもイージーとシンプルは紙一重で、本作はイージー味を強く感じる。
もう少しがんばって下さい。

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この映画で小林幸子がああなってしまうのは必要だったかねえ。
どうせなら、徹頭徹尾ハートフルを貫いて欲しかった。

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