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< 愛と哀しみの果て >(テレビ視聴)

この映画の原作(と言わなきゃいけないんだろうね、多分)である「アウト・オブ・アフリカ」は
わたしが大好きな本だ。Best 5 of My Lifeには必ず入るし、
何か1冊を持って逃げよ、という羽目になったら、もしかして選ぶのはこれかもしれない。
しかしそれほど好きな作品が、なぜ映画では「愛と哀しみの果て」なんぞという
メロドラマの極致のタイトルになってしまう?
ちくしょー、見たらけちょんけちょんにけなしてやるぞ!

……と、手ぐすねひいて見たところ、映画の出来はそれほどひどくはなかったのでした。

メリル・ストリープは、実は「マンマ・ミーア!」しか見ていない。
いや、正確には「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」も見てるが、
あれはかなりのチョイ役でしょ。
彼女が主役をやるような話に、わたしは惹かれないということなんだろう。
女の愛と人生、というような。まあよく知らんので偏見だけれども。

でも良かったですね。この映画では。

女優の王道を行っているというイメージがあり、その王道ぶりがなんか鼻について嫌だったのだが、
この頃は若いせいか、まだ線の柔らかさ、繊細さが残っている。
表情や仕草も、全く魅力的に見せようとしない。なのでかなりもっさりした印象も持つが……
しかしこの背景のなかではそれが正解なんだろうな。風景の中で「女」が浮きだすよりも。
……という説得力が彼女のお手柄。

ロバート・レッドフォードは……特になし。見たことがあるのは「スティング」だけで、
その映画の印象はかなりいいのだが。1973年か。もっと昔の映画だと思ってた。
ま、本作ではただのオトコですしね。あの身勝手ぶりは、かっこ良くても願い下げだ。

話はだいぶメロドラマの方向へ振れてはいるが、このくらいは仕方ないんだろうなー。
原作は、著者のアフリカに対する憧憬が書かせた作品だと思う。
そして憧憬という感情は、そもそも映像になりにくいものではないだろうか。
特に過去への憧憬は。――文章で書くにしても、回顧譚で終わらないためには
何か一つの輝きが必要である気がするし、それを映像化するならなおさら技が。

そういう難易度Dの技に挑み、さらに失敗するリスクを背負うよりは、
少なくとも平均点はねらえるロマンス風に話を切り取るのも、興行的には仕方ないだろう。

ただ、原作を尊重して作るのなら、もっとキクユ族との交友を描いてくれないとね。
原作を2回しか読んでないので記憶はおぼろげだが、キクユ族の話が65%で、
アフリカの自然が20%、デニスが5%、元旦那が2%、農園の話が5%、
(アフリカ外での)自分の話が3%……配分的にはこんなもんでしょうか。
数字はすごく適当だけれども。

うーん、でもこの出来くらいだとリメイクを熱烈に希望!!とまでは言う必要がない。
アフリカを美しく描いてくれたのもこの作品はお手柄だと思うので。
……ま、深くはないにせよ。

メリル・ストリープのナレーションの声が、「指輪」のケイト・ブランシェットを思い出させたせいか、
リメイクをするならケイト・ブランシェットで撮って欲しいなと思った。
そうなるとデニスは誰だ。元旦那は出てこなくてもいいし、デニスの出番もぐっと少なくていいが、
全く出てこなくてもつまらなかろう。
一応フィンチ=ハットンは貴族だったはずなので、ロバート・レッドフォードは
少々品が足りない気が……。別に下品というのではないが。
品があって骨太、というのはなかなか難しいね。

キクユ族との交友をメインに描くのは難しかろうなー。
もちろんアフリカでの撮影も金がかかって大変だろうが、
それよりアフリカンの俳優の数を揃えるという意味において。
ドキュメンタリーを撮るつもりで取り組めば何とかなるか。
いや、でもドキュメンタリーとして1920年代を撮るのは不可能だろう。

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