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◇ 堀田善衛「別離と邂逅の詩」

あまりにも素直な詩でびっくりした。
この時代の人って、もっと硬い、あるいはとんがった詩を書いていたんじゃないの?
これではまるで……中原中也あたりの時代と同じだよ。

と思ったら、中原中也と堀田善衛って生年は10年くらいしか違わないのか!
これもびっくりだなあ。中原中也ははっきり昔の人というイメージだが、
堀田善衛はあまり昔というイメージはなかった。
まあ中也は若死にだしね。堀田善衛は晩年までなかなか充実した作家生活を送った人らしいから、
1990年代もがっつり書いてるし。
(そのわりにわたしが堀田善衛の名前を知ったのはここ数年だが)

わたしが中也好きだから似てると思うのか?と自問したが、
解説によれば堀田善衛は中原中也の影響をずいぶん受けているらしい。
わたしからすれば、中也よりもっと先祖返りをしたような素直さを感じます。
うーん、中也をベースとしつつ、島崎藤村の「初恋」のような甘さ?

技術で作る詩は――頭で作る詩はある程度まで数を揃えられるだろうが、
こういう、心で作る詩はやはりいけても数冊分が限度だろうな。
そもそも堀田善衛が詩を作る人かというと、違うと思う。
堀田善衛と言えば、そのめちゃくちゃに自由な書きぶり――とわたしは毎回言っている――に
魅力がある人なのであって。詩は自由だと思われがちだが、そもそも箍が外れている
現代詩の場合、本当に自由に書いてそれが形になることは実はあり得ないと思います。
つまり相当考えに考えぬかないとなかなか作品にはならない。
自由自在に書く堀田善衛の場合、それは難しいと思う。
エッセイが魅力的だよ。小説よりも。

で、本作の詩の話に戻りますが、中也好きとしては好きにならずにはいられない詩群でした。
だがずっと覚えていたい魅力的な一篇、一行、といわれると特になかった。
でも嬉しい驚きでしたよ、こんなに楽しめる詩を書いていた人もいたんだなあと思うと。
こういう素直な詩は、多分もう誰も書かないだろうから。

別離と邂逅の詩
別離と邂逅の詩

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堀田 善衞
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装丁もちょっと良かったのだが、アマゾンに載っている画像は新しいもののようです。
それともこれは外箱か?

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