あまり語るべきことは多くはない。
唯一言いたいことは、これはいわば「遠野物語」の遠い子孫だということ。
この人の作品は4作目か。本作の道具立てはかなり「六番目の小夜子」を思い出させますな。
高校・噂・噂に操られる人々・事件。
この人はとにかく噂が好きだね。4作しか読んでないなかで言うのは乱暴だが、
書きたかったのはおそらく言葉の呪縛。
――というよりむしろ場所の呪縛かな。雰囲気・歴史・噂・言い伝えをひっくるめて
その場所に付属するものの呪縛。「Q&A」も今から考えれば、本人的には現代社会の病ではなく
場所の呪縛を書きたかったんだろう。
場所の呪縛?この言い方は当たっている気がしない。
なんていえばいいのかな、結界内に及ぼされる魔力。
経歴からは伺えないが、きっとこの人、民俗学好きだろうなー。
……まあそうでなかったら作品に「常野物語」なんていうタイトルを選ばないだろうけど。
今回のタイトル「球形の季節」は実はわたしにはわからないのですが、石のことですか?
きれいなピラミッド型の小説ではなくて、不定形なアメーバのような小説だが、
その不定形さに魅力がある。本来わたしの好みはどっちかというとかなり定形だから、
あまり好きじゃない方のはずなんだけどね。
並べるのが妥当かどうか、自分としても今ひとつ自信はないけど、
西の池上永一、東の恩田陸と言いたい気がしている。もっとも恩田陸はそれほど地域性を前面に
出しているわけではない。たまたま本作で東北地方を舞台に設定しているけれども、
それほど濃厚な地域的体臭を持ってはいない。
――しかしそう思うのはわたしが東北人だからだろうか。
今から思えば「夜のピクニック」は相当にフツーの青春小説でしたな。
これからツブしていこうと思っているけど、いろんなものを書く人なんだろうねえ。
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