図書館に申し込んで三ヶ月くらい待ったかなあ。
予想よりはるかに軽めの話でした。精神科というからもっと肩肘張ったものを想像していたので。
キーパーソンの伊良部先生のキャラクターが成功していると思う。
これこそ癒やし系というべきか。たまに思い出してにやりと笑う、という造型。
ワンパターンが嫌いなわけではないんだけれど、短編でみんな同じパターンなので
ちょっと鼻についたかな。どの話でも「ふと」立ち直る部分があっさりしすぎているように思う。
実際上は、精神的に立ち直るきっかけなんてほんとに「ふと」なんだろうし、
リアリティがあるのかもしれないけど、フィクションとしては物足りないような気がした。
色々な職業の姿が垣間見えたのは面白かったかな。
野球選手の話もありましたが、実際の野球選手から見て、あの話は納得出来るものなんですか。
機微を捉えている?取材が大変でしょうね、リアリティを持たせるための。
“プロスポーツ選手は一流であるほど孤独”ですか?(うろ覚え)
ついうっかりと頷いてしまいそうな一文ですが、でも人間は皆孤独だと思いますけどね。
プロスポーツ選手の場合は、プライドという道連れがいる分、楽でもあり辛くもありで、
多少種類は違うと言えるかもしれないが。
“最初から出来た人間は修正に手間取る”というのはそうかもなあ、と思った。
出来ない状態を知らないわけだから。エリートほど挫折に弱いというのはここのことですね。
一番心に響いたのは最後の話の、中島さん?の長台詞。
わたしはあまり「埋もれた名作」を知る能力も嗜好もないので、そういう思いを実際に
自分がしたことはないのだけれど、一冊中、ここには力を感じた。
作者が実際に感じていることなんだろうな、と思う。
そこから思うに、昨今の「きれいでカンドー」系の乱立はどうなんでしょうねー。
読んでもいないし、見てもいないから言う資格ないけど、
「世界の中心で~」「今、あい~」「電車男」(きれいか?)みんな同系統に見えて。
これ系が売れる!となったので出てきたのばっかりというイメージが……
お手軽っぽくてなんかイヤ。まあ売れるからしょうがないんですけどね。
ちなみに、わたしの場合、他人に薦められた本を気に入ることって10%以下の確率ですので……
そもそも薦められて読むところまで辿り着くのが20%以下。ヒジョーに趣味が狭いんです。
なのでこれから読む予定の方はどうかお気になさらず……
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しかし読んでみて思った。この本は読書初心者向けじゃないかもなあ。地味。
読んで面白い、面白くないというのとは別なところに、”とっつき”というものがある。
普段しない、読み始めるということには結構意志の力が要るもので。
この本にはモチベーションを高める要素があんまりないかも。読みやすい、というのは利点ですが。
モチベーションを高めるには
1.興味のある分野
2.知名度
でしょうかねえ。
興味ある分野を知ることはそう簡単ではありませんが、あくまで一般的な
二十歳そこそこの男の子(男の子、だと思う。多分。)だったら……
そーだなあ、ゲームをするorマンガを読む子ならライトノベルを勧めますかねー。
とりあえず田中芳樹の「銀河英雄伝説」を推してみる。
わたしはこの本自体はそんなに好きじゃないけど(別なシリーズの方が好き)、
引き込む力はあると思う。しかも長いから、一度はまると読書癖がつく♪
田中芳樹、近作があまりにもひどかったので、わたしはもうすっぱり読む気がなくなったのですが……
映画やドラマを見る人だったら、ノベライズ本とかもありかな。小説か?という気もするし、
あまり重きを置きたくないけど、読みやすいし、興味も持ちやすいかもしれない。
実は初心者はフィクションじゃない方がいいかもしれないんですよね。
旅行記なんかはどうなんだろう。それこそ「深夜特急」とか?
最近田口ランディの「忘れないよ!ヴェトナム」読んで、ものすごく読みやすかったですが。
絵が多いので手に取りやすいか、という意味もこめて妹尾河童の「河童が覗いた」シリーズとか。
うーん、こっちの方が地味か。
知名度、というのは取り掛かるきっかけになりうると思うんです。
わたしも「あー、これ読んだよー」といいたいばかりにここ数年でシェイクスピアや
芥川龍之介を読んだばかりで……(^_^;)。
「読んだ」と言えればかっこいい、というのはモチベーションになりませんかね?
わたしが見栄っ張りなだけだろうか。
その点から言うと村上春樹とか。しかしわたしはこの人短編集二冊しか読んでない。
内容は初心者向きじゃないイメージもあるしなー。
あとかっこいい……宮本輝はちょっとかっこいい?読んだことないけど。
司馬遼太郎?歴史が嫌いじゃないなら、この人のものが読みにくいってことはないと思いますけれどね。
あ、でも傾向として長いか。
ポピュラーってことで、東野圭吾なんかはどうでしょう。この人も二冊しか読んでないが……(^_^;)。
ホラーで小野不由美?この人も二冊なんだなー。
二冊しか読んでないということは、大して面白いと感じなかったということです。
宮部みゆきは5冊目にしてようやく「面白い」と思ったのにぶち当たりました。
……わたしは有名どころをほとんど読まないので、知名度で推薦するのは不可能かもしれない。
あ!やっぱり赤川次郎でしょ!
この人が読書のきっかけと言う人はだいぶいると思います。
ちょっと古いのがマイナスかな。
うーん、一所懸命考えても、やっぱりこれ!というものは思いつきませんねー。
そもそも自分が、人に薦められて面白かった本ってほとんどないからなー。
そんなわたしが薦めてもやっぱり駄目かもしれない。
……が、私事ですが、最近どこぞでお薦めされていた本で、
池上永一「風車祭」
というのを読みました。これは久々に読んで良かった、教えてくれた人ありがとう、という本でした。
どこがいいのか明確に言えないのですけれどね。ただ沖縄好きだからこそ、惹かれたのかも。
読んで良かったと言う本にめぐり合うことが少ないので、しみじみ嬉しかったです。
珍しく、この人の別な作品も読んでみようかなと思った作品でした。
あ、相当厚いので初心者向けではありません……
<古田敦也公式ブログ>
http://blog.so-net.ne.jp/atsuya-furuta/2005-07-14
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