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◇ 歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」

これは以前、けっこう世間で評価が高く、名前だけは知っていた作品。
「このミス」とか、その他各賞を軒並み受賞したらしい。

読み終わって、まあね。という感想。
特に腹立たしさもないが、それほどの面白さもなく、淡々とちょっと飛ばし気味に読み、
それで終わりという。

叙述トリックとしては相当な大技を決めている。
そこで「おお」と思ったのは事実。――が、その部分を面白さに含めるか、
「だから何?」という感想を持つかでこの作品についての評価はざっくり分かれる。
わたしは後者だったので、評価は低め。

「本格」として叙述トリックを使うなら、もっとがっつりミステリ部分に直結したもので
あって欲しいんだよね。この作品で叙述トリックは、ストーリーには組み込まれてるけど、
ミステリとして必要な部分かというと全然そんなことはなく。
だいたい近年「本格ミステリ」と銘打って、これぞという作品にもそうお目にかからないんだから、
それほど期待していたわけではない。でもこれをあまりもてはやす気にはならないなあ。
つまらなかったわけではないが。毒にも薬にもならん。

キャラクターも特に魅力的なわけでもなく。だからといって腹も立たず。
(主人公が麻宮さくらに惚れるのはサッパリわからんが。)
文章も別に腹は立たず。時々出てくる気になる部分は作者の失敗ではなく、
叙述トリックのために必要とする文章のようだ。

ただ、単行本の最後についている補遺とか、何だかっていう人による小論とか、
本人のインタビューとかは読む気になれなかった。
こういうのが付いていると駄作というイメージになる。

葉桜の季節に君を想うということ (本格ミステリ・マスターズ)
歌野 晶午
文藝春秋
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アマゾンのレビューが200ほどついている。この数自体もなかなかだが、
それが星1つから5つまで、ほぼ同数で並んでいるのが興味深かった。
こういうのも珍しいのではないだろうか。

わたしはタイトルと内容が乖離していると思う。
タイトルで得をした1冊。

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