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「過去の新刊めったくたガイド」の消滅について。

WEB本の雑誌。
たとえ大手出版社が敵になろうとも、アンタだけは我々の味方だと思っていたのに!
我々に顔を向けて仕事をしてくれると信じていたのに!
なぜ何の予告もなく「過去の新刊めったくたガイド」を消したのだぁぁぁぁっ!

……WEB本の雑誌というサイトを知らない方にとっては、何のことだか
さっぱりわからない話でしょうが、世の中にはこういうサイトがありまして。

WEB本の雑誌

4月20日にサイトをリニューアルするまでは、
「過去の新刊めったくたガイド」というコンテンツがあったんです。
それが突然なくなった、と。

その時の衝撃を説明するためには、わたしの読書史に言及しなければなりません。
これがまた例によってだらだらと長い話だけど。

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今でこそ多少は選択の幅を広げたとはいえ、6、7年ほど前までは、
わたしの読書傾向は、目を覆うばかりに狭い範囲のものだった。
特に小説がヒドイ。面白くない小説を読むのは人生の大損失だ!と当時は激しく思っていたので、
新しい作家に手を出すのに大変勇気が要る。

だって読んで面白くなかったらどうするんですか!

小説は直接情動に訴えかける。
ゆえに合わない小説を読んでしまうと、それにひっかきまわされてその後数日心が落ち着かない。
間違って読んでしまった「パラサ○ト・イヴ」……。読んだのをどれほど後悔したことか。
これを「面白いよ」と自分に薦めた友人を恨んだりして。

そういう思いをするのがイヤだから、小説についてはひたすら安全策。
が、安全策を取るのも限度がある。好きな小説家と言える人が、
――“好き”の範囲をどの程度まで広げるかによるが――
まあ10人とかいうレベルで安全策を取り続けていると、
年にせいぜい10冊、がんばって範囲を広げても20冊程度しか小説が読めないのです。

わたしの読書量は、当時おそらく月12、3冊くらいだった。
小説がそのうち1冊か2冊だと、残りは知識本やエッセイ。
が、月10冊知識本(あるいはエッセイ)を漫然と探すのもけっこう骨が折れます。
当時通っていた図書館は比較的小さい方だったし、開架図書の棚を回って
面白そうなのを拾う選び方だったので、何年か経つうちに並んでいる本に飽きてしまって。
「読みたい本がない読みたい本がない読みたい本がない」と唸りながら
図書館の棚から棚へ徘徊するドーブツ。

他の人はどのようにして読む本を選んでいるんだろう?
自分の好みが通常よりも狭い自覚はさすがにある。でも他の人って(読書初心者以外)、
本を探すのにそれほど苦労はしていないようじゃない?

……やはり情報収集が必要なんだろうか。
偶然の出会いを単に待っているだけじゃ出会えないんだろうか。
自分から努力をしなければ、運命的な出会いはないんだろうか。

ついに観念して読活をする決心を固めたが、どのように情報収集をすればいいのか。
新聞・雑誌は読まないし。他人に薦められた本でまあ面白いと言える本は10%くらいしかないし。
確かに世の中には書評本というものもある。しかし1冊まるまるその人の視点で集められたものは、
合わなきゃ全体的に合わないだろうしなあ。副次的なソースに留めておきたい。
出来れば複数の中から信頼できる書評家を選択したい。この人の薦める本なら大丈夫!という。
しかしそういう人にはどうやったら出会えるのか?

そこで出会ったのが、「WEB本の雑誌」だったのです。

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ああっ!本のカミサマありがとう!
これはまさにわたしが求めていたサイトではないか!

初めて見た時は本当に感動しました。
たしか最初に辿りついたのは、これも今は亡き「読書相談室」のコンテンツ。
一般人が「○○で××っぽいストーリーで、△△な雰囲気の小説はありませんか?」
という質問を寄せ、それにWEB本の雑誌が誇る(?)書評家のうちの一人が回答するという。
これは、数の中から自分に合う書評家を探したいと思っているわたしにはぴったりだった。
このサイトのこのコンテンツを最初から読んでいけば、ここに登場する書評家の中から、
もしかして自分の水先案内人が見つかるかもしれないではありませんか。

そこからわたしの課題図書リストづくりが始まりました。
「読書相談室」から、面白そうだと思った本をパソコンのワード文書へメモ。
“書評家○○推薦”という但し書き付きで。データを取るために、別にエクセルで
書評家別の成績表を作成。(←これについてはこちらで言及)
……実はわたしはリストマニアで、こういう作業が快感なのだ。今から考えると
なんでもっと早くこういうスタイルをとらなかったのか不思議に思うほどだが、
きっと“運命の出会いは運命的に訪れるものだ”という神話を信じていたんですね。

「読書相談室」を主軸に、他に目についたネット上の記事、書評本、読んだ本の中から
気になるタイトルを拾っていくうちに、リストはあっという間に500冊を超えました。

うーん、500冊か……。
当時の読書ペースでいうと、すでに3年分の在庫を抱えてしまったことになる。
作成開始から多分1ヶ月もかからずにここまで育ってしまったのだから、
このままリストを育て続けると、あっという間に死ぬまでの課題図書が埋まってしまう。
……それはなんかコワイ。ちょっとセーブしとかないと。

その頃に見つけてしまったのですね。「読書相談室」の他にも有用なコンテンツがあることを。
それが「過去の新刊めったくたガイド」。
むしろこれの方がわたしにとっては有用かもしれない。質問に対する回答ではなく
書評家自身の選択だから、より彼らの好みの反映されたものになっているだろうし、
何しろデータは5000冊分!(←当時。最終的には6000冊以上のデータになっていたはず)
しかも書評家ごとの検索も可能!
宝の山に見えました。垂涎。

でもやっぱり野放図にリストを育てることは出来ない。

だからその後は。それはもう、ちょこちょこと。まるで悪いことをするかのように、こっそりと。
リストがほんの少し短くなった時を狙って、「過去の新刊~」をちょっとずつ見て、
ほんの数冊ずつリストに本を追加していきました。逸る心を抑えつつ。
……これだけ遠慮をしていても、他のソースもあるもので、
結局リストはあっさり1000冊を越えてしまったのだが。
「過去の新刊~」をツブすのはどんどん遠くなっているけど、
でもいつかは!「過去の新刊~」を制覇するんだ!水先案内人を見つけるんだ!

………………。

そして冒頭の一行に戻ります。

WEB本の雑誌。
――アンタだけは我々の味方だと思っていたのにっ!!

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わたしがチェックし終わったデータは1995年の5月までだった……。
残り15年の蓄積が。宝の山が。ココロの支えが。老後の楽しみが。
美味しいお菓子をちょっとずつ味わうように、ずーっと楽しめると思っていたのに。
あー、もうっ!この傷ついたココロを一体どうしてくれるんですかっ。

データだけでも残しておいてくれるわけにはいかなかったのかなー。
コンテンツとしては終了しても、「読書相談室」はずっと残しておいてくれたじゃない。
しかも「読書相談室」が終わる時は、何ヶ月も前から終わりを予告してくれたじゃない。
あの時はその誠実な態度に感心したのに。今回のだまし討ちは何たることか。

正直、サイトも見づらくなりましたしねー。
わたしは直線的に求める情報を得たい方なので、注目記事・新着記事が邪魔で仕方がありません。
売らんかなのサイトに変わったってことですか?最初にうすっぺらい新書の宣伝を
見なければならないのが萎えるのだ!
「横町カフェ」は今回のリーマンショック(?)を乗り切ったようですが、
ホームから直接行けないってのはどうなの!作りが変すぎるよ!責任者出てこい!

君は、変わってしまったんだね……。

そう呟いて、コートの襟を立てつつ去りたいような、そんな気分の昨今です。
わたしは昔のアナタが恋しい。過去を切り捨てて行くなら、今を生きてる意味がないぜ。
思い出を(つまりデータを)大事にして。過去の集成がアナタなのよ。

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