ヨンデモ本。
この本はもう、何十年も前から(は、大袈裟か。ちくま文庫に入って以来)気になっていた。
タイトルのインパクトが強かった。すごく目につくんですわ。今回ようやく読んだ。
明治時代に宮武外骨という奇矯な出版人がいた。
どういう風に奇矯かということを、外骨本人の出版物をがんばって多数引用して
(これが大変だったと思う……。白水社おつかれ。読む方も、字が細かすぎて疲れたけど。)
解説した“小説”。え、小説?――だって「学術小説」って表紙に書いてあるんだもん。
小説を期待して読むと気の毒なので、先に言っておきますと、これは実際はエッセイの類です。
美学校の生徒たちに外骨の魅力を伝える、という体裁。つまりメタフィクションか。
……あれ?実態はエッセイで、正確にはメタフィクション?
まあいいや。細っかい字を目をこらして読まなければならないページがあることを除けば、
難しいことを考えずに気軽に読める本です。
宮武外骨。キッチュで筋っぽくて明治時代並みのエログロで、ちょっと硬派な人?
1985年出版の本なので、けっこう古さを感じる。当時は多少の外骨ブームだったらしい。
実はこの連載、途中で一旦中断したそうだ。理由は「外骨は面白いが、その面白さを
面白く(楽しんで)書けなくなったから」。
そもそも赤瀬川さんにとって外骨は、依頼を受けて何度か書いてみようとしたけれども、
どうしても書けずに挫折した、という因縁のあるテーマらしい。
今回も白水社の依頼に一念発起して再度挑戦したはいいが、やはり……ということになったようだ。
しかしこの辺の内証を原稿用紙に書くというのが、赤瀬川さんの変わったところだよなあ。
ぼそぼそ書いて面白い。こういうところが彼の芸だと思う。
この本を書いた時、彼は40代後半。文章が、少々若い感じがありますな。
赤瀬川さんはユーモラスな枯淡の味わいが真骨頂だと思っているけど、
それはもうちょっと経ってから出てくるらしい。
筑摩書房
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本の感想も、「面白い」ということを面白く書くのは至難だよねー。
ここがこうだから面白い。なんて蛇足でしかない。
面白いから読んでみろ、ということしか出来なくて、全く内容のない文章になってしまう。
むしろ、面白くない場合の「どこがどう面白くないか」の方が、熱をこめて語れる場合が多い。
プロの書評家は偉いと思います。説得力のある「面白さ」を書かないとならないもんね。
面白い本であればあるほど、褒めることの無力感を感じないではいられないはずだから。
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