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◇ 藤森照信「建築探偵、本を伐る」

ヨンデモ本。

昔とった杵柄というか、芸は身を助くというか、普通だったら建築分野の先生が
書評を頼まれることなどないと思うのに、藤森さんは何と書評本まで出しています。
書評?感想文?まあいいか、どっちでも。

読んでいて、どうもパワーショベルのイメージが頭から離れなかった。
なぜ書評を読んでパワーショベルなのか自分でもよくわからないが、
考えてみるとこの本、全体的に“ガッと掴んでゴーッと運んでパッと放す”
って感じなんですよね。……そんなこと言ってもさっぱり伝わらないだろうが、
まあ読んでみてください。なんとなく納得出来るかと。

書評って、一般的に良くも悪くも細かい話になりがち。
その本に誠実に対すれば対するだけ、書評家本人の個人的な部分が出てくるわけだから。
が、藤森さんのこの本は、何しろパワーショベルなので明快。
ブンガクの辛気臭さとは無縁な、開放感のある書評として稀少価値があるのではないでしょうか。
ということは反面、文学を求めて読む人には向かないという意味でもありますが。

これなあ。藤森さんに、もっと一般的な本を取り上げてもらった上で、
読書をお勉強としてとらえがちな高校生あたりに読んで欲しい気がする。
この本のラインナップは建築関係に偏りがちなので、一般向けとは言えないでしょ。
「こういう読み方でいいんだ」と思えれば、読書の裾野はもっと広がるんじゃないかなあ。

建築探偵、本を伐る
建築探偵、本を伐る

posted with amazlet at 09.12.09
藤森 照信
晶文社
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この本の中でマヤ文明を文字のない文明と言っている部分があったように思うが、
これはチョンボでしょう。マヤには、ものすごくリッパな、リッパすぎて
「ホントにこれが文字?」というような複雑な文字がありますぜ、藤森せんせ。

あと、一ヶ所「どおりで」と書いてある場所がある。
本人の誤字かどうかは不明だが、これもチョンボでしょう。
……実は、ワタシもずっとこう書いており、「どうりで」を漢字で「道理で」と当てることに
数年前に気づきました。以後「どうりで」と書いているが、未だに違和感がある。

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