ヨンデモ本のご紹介。
去年の年末に初めて読んで以来、堀田善衛のものはこれで6冊目。
正直最初の1冊目ほどは感心しないけど、まあまあそこそこ面白く読んでいます。
この本は、タイトルからして知識本だと何の疑問もなく思いこんでいたが、
一行目から「私」という一人称でラ・ロシュフーコーが登場し、
「へ?小説?」と肩すかしを食わされたまま読み進んでいくうち、
全くの三人称で家系の話が長々と語られ、幾らなんでも当代にさしかかったら
「私」として書くのだろうと思いきや、自分のことすら三人称で淡々と描き、
しかし時々「この辺で“私”に戻ろう」なんて感じで自由自在に一人称を使い、
一体小説なのか、知識本なのか!と問い詰めたい気持ちは山々なれど、
……なんだかよくわからないが、面白いからまあいいか、という気分になる本。
小説では……ないよな、きっと。語り手は叙述者に徹しているし。脱線はあるけど。
こういう内容なら、堀田善衛が語る知識本として書くのが普通だと思うのだが……
それをあえてラ・ロシュフーコー自身に語らせる。微妙な作りだ。
ここらへんの微妙さをよく考えると、小ウルサイ系のわたしとしては
こんなんじゃいかん!と言わなきゃならなくなるので、あんまり考えないことにする。
いいんではないですか。読みやすいし。
一定の効果はあげていると思うしね。……ま、ユルいと言えばユルいのですが。
ラ・ロシュフーコー公爵というのは、あの箴言集の人。
岩波だと、表記はラ・ロシュフコーですが。
箴言集を読んだだけではどんな人なのか具体的にはわからないので、それを堀田善衛が
どのように語ってくれるのか、けっこう楽しみにしていた。
この本ではけっこう素朴な人っぽく描かれている……。
箴言集のイメージからすると、もう少し叡智のある人でもいいだろうと思うけどね。
シニカルな、というか。
この本で気になるのは、とにかく「驚くべきグールヴィル」だ!
彼についての本とかないのかな。あるなら読みたいけどなー。
検索してひっかからないということはないっぽい。
この本だけでは全然足りないよなー。
……はっ!
堀田善衛がこういう微妙な作りにしたのは、このグールヴィルをこんな風に
ラ・ロシュフーコーに語らせたかったからか!?
……考えすぎか。
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