【……ふっとんどるなあ。】
鈴木清順監督。この人の作品は「夢二」しか見たことないけど、たしかにあれも
かなりふっとんだ作品だった。コレほどではなかったが。アクロバティックだ、ここまでやると。
これを見ちゃうと、<真夜中の弥次さん喜多さん>なんてだいぶまともな話だな。
何しろこっちにはストーリーがない!あると言う人もいるかもしれないが、まあほとんど全くない!
なので左脳で考え始めると腹が立って来るかもしれない。きっと脳みそが
”理解不能”のストレスを感じるせいだろう。なので考えない。何も考えずに見る。
で、何も考えずに見ると、これはこれで面白みのある作品だったりするんですね。
何しろ明るい。明るさは好きだ。わけのわからん現代アートだって、色使いが
きれいだったら少しは許す。わけのわからん暗い絵を作る奴がものすごくキライだ。
ポロックとかポロックとかポロックとか。
いやまあそれはおいといて。
監督の狙いは”意識の空白”かな、と思った。予想を裏切る、というのと微妙に違う、
監督は、誰もがすっかり忘れていたところにピースを埋めるような画を持って来る。
見ている方は「うわ、こんなところにこんなものが」と驚く。それを延々と繰り返す。
一回二回なら、素人の出鱈目でも出来る。しかし二時間をそういう動かし方で繋ぐのは、
……やはりこれは少々エライことなのかも。
画は、美しいという気はしない。なんていうか、衣装も小道具もすごく凝っているんだけれど、
それが思ったほどの効果をあげてないというか。狙いが違うのかもしれませんね。
例えばチャン・ツィイーの衣装で、ピンクの小袖に赤の着物を羽織る、というのがある。
わたしは赤とピンクの組み合わせでは美しいとは思えない。もっとすっきりとした
色使いがあるのに、と思う。が、多分すっきりを求めてないんでしょうね、この場合。
洗練されていない、重たい、安っぽい……狙っているのはこういう線なのかも。
今回、チャン・ツィイー目当てに行ったのですが、……日本映画初出演がこれでいいのかね?
可愛かったから、見る側としてはいいんですけどね。日本語の歌もがんばっていた。
平幹二郎がスゴイなあ。他の役者は全員取替え可能だけれど、彼だけは外しては成立しない。
あ、といっても、他の役者も悪くないですよ。
由紀さおりがあっさり死んでつまらなかった。
ぶふっ、と吹き出すところも、にやりと笑うところもあった。
画で笑わせるんだから感心する。
が、退屈だった部分があって、それは極楽蛙を取りに行くあたり。あの辺は画が普通。普通すぎる。
ストーリーがまともになってしまった分、勢いが消えたか。
しかしデジタルひばりとはなあ……。美空ひばりと狸御殿の関わりを知る前は、
なぜそこまでしてひばりをひっぱって来るのかわからなかった。
でも基本的にはやるべきことではないと思う。これから技術がどんどん進んで、
もし過去のデータから死んでしまった名優に演技をさせることさえ出来るようになったら。
それは気持ちの悪いことでしょう。それは”その人”じゃない。死人に演技をさせるな。
それにしても、パンフレットの冒頭の一文、
「胸を締めつけるせつないラブ・ストーリーと、一緒に歌って踊りたくなる最高に楽しい
オペレッタミュージカルが一つになった、究極のエンターテインメントが誕生した!」
というのは、
大嘘です。 詐欺だ。
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