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◇ ジャン・ラスパイユ「引き裂かれた神の代理人 教皇正統記」

ヨンデモ本のご紹介。

最初は「ダ・ヴィンチ・コード」風トンデモ歴史小説本かと思った。
うーん、まあそうじゃないとも言えないけれど、こっちの方がだいぶマトモな系統ですな。
本来ならば小説にする内容じゃないだろうが、

   失われた伝統や忘れ去られた史実にひとかたならぬ愛着を感じて、
   その発掘に格別の意義を見出し、情熱を注ぐ作家である氏にとって、
   小説はその心情を吐露するのに最も適した手法なのである。

とあとがきに書いてあるように、“心情を吐露”したかったんだろう。
フィクション要素ありの歴史探究本というところ。

読みやすいかというとその点ちょっと、だが。
わたしは塩野七生がゆえに教皇(同じ理由で、わたしは法王の呼称を使いたいけどね)とかの話も
多少馴染みがあるつもりだが、それでも教皇名がずらずらと並ぶ本書は微妙にとっつきにくかった。
大分裂については――それがあった、というだけの知識しかないし。
キリスト教世界では当然の、前提の知識がごっそり欠けているので、
ちと小説としての実感にも欠ける。
小説としてはかなりぷつぷつ切れた書き方(当時と現代をほぼ交互に書いている。
が、それだけではなく。)をしているようだし。

でも、こういう歴史の裏面を描く本が好きな人は多いでしょう。
そういうジャンルとしては良作。地味に面白い。無理に主張しておらずこじつけを感じさせない。
まあ現教皇(前教皇か)というか現ヴァチカンが最後こんなに温かく遇するはずはないと思うけどね。
ブノワの静謐さも心に残る。ブノワの過去をもっと書いて欲しかった憾みはあるが、
(ここをもっと書かなければ。せっかく小説にしたんだから)フィクション部分にも価値を感じた。

タイトルがちょっとヘタかなー。直球すぎて、興味を惹かない気がする。
わたしはこれを読んでこの本を読んでみたんだけど。

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この人はわたしよりも、よりフィクション部分に反応しているらしい。

引き裂かれた神の代理人―教皇正統記
ジャン ラスパイユ
東洋書林
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