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< K-20 怪人二十面相・伝 >

うーん。
作りはわりとがんばっているし、金もけっこう適正にかけている気がするし、
役者も悪くなく、舞台設定、雰囲気、嫌いじゃないのに。
なんでこんなにノレなかったんだろう?我ながら疑問だ。パンフレットを買わずに帰って来た。

つまんなかったわけではないと思うんだけどなー。
見ながら、美点は何度も意識してたんだよ。
「あー、ここのセットがんばったなー」とか、「ここで雪を降らせたのは行きとどいてるなー」とか。
評価する点は多々あった。最初、日テレ55周年記念(?だっけ?)と出た時は、
「うわ、テレビ局付きか」とちょっと失望したが、蓋を開けてみればそこそこ力も入っていたし。
いつもわたしが文句をつける脚本も、良作とまではいかないけれど、
そんなにひどくはなかったと思う。まあこんなもんでしょ、というレベルまでは来ていた。

唯一考えられるのは……テンポ、だろうか。わずかにのろかった気がするかなあ。
まあ、あの雰囲気であまりスピーディ過ぎてもそれは設定の無駄というものだが、
もう少し何かが足りなかった気がする。何なのかはわからないが。
もう一押しカッチリつめていたら、ぐんと良くなったのでは。

役者。は、総じてみんないい。

金城武の演技が棒だというウワサを時々聞くが、それは思わなかった。
部分的には多少「へ?」という時はあったけど。

松たか子は「絵に描いたようなお嬢さん」をやれる貴重な役者。
お嬢さん役に何が必要かというと、まず第一に姿勢の良さですなー。
花嫁衣装の時のラインがきれい。彼女は踊りもやっているから、それも寄与してますな。
「お嬢さん」役なら、例えば緒川たまきも可だろうけど、「絵に描いたような」部分は松たか子。

國村隼が……もう最近はいろんな映画にいろんな役で出ている。いい役者ですよ。
ひっぱりだこのこの状況は「芋たこなんきん」効果ってことでよろしいですね?
「芋たこなんきん」は好きだったんだよ。NHK朝の連ドラ、わたしは基本的に嫌いで、
状況的に可能であればチャンネルを変えるが、これだけはちゃんと見た。
(というか、最終回近辺まだ見てない……)なので嬉しい。

高島礼子もこういう老け役をするようになったか……。
老け役っていうか、まあこの役柄は40代位でもいいんだから実年齢と変わらないが、
こういう役ってのはねえ。実はクレジットを見るまで高島礼子だってわからなかった。
でもあのシスター役は高島礼子が活きてましたな。いいキャスティングだよ。

ただ、仲村トオルがちょっと。
何が気になったって……彼の肩幅のなさ。
最初から最後までものすごく気になってしまった。痩せたの?もともと肩幅がないの?
肩幅がないから、頭がとても大きく見えて、そのバランスの悪さが気になって気になって……
実は作品に集中出来なかった一端はここにあるくらい。演技的には別に悪いとは思わなかったんだが。
もうちょっとバランス良く見せてやれる衣裳もあったと思うんですけどね?
非常に人相が悪くなっているように見えたのは、……演技であればエライけれども、
なんか本人そのものの人相の気もして、ちょっと心配。

小林少年はあまり好みじゃなかった。もう少し凛としたオトコノコを持ってきてほしいところだ。
色が白いは七難隠すというけれど、あまり白いとやはり優男のイメージからは抜けられませんな。
小林少年の演技とセリフは、少しミスリードをしてましたか?
わたしはそれに見事にひっかかりましたが。

小日向さんと鹿賀丈史は「ああ、小日向さん!」「おお、鹿賀丈史!」で満足。

セットは花丸に近い三重丸くらい。
そうかー、上海ロケね。エンドクレジットまでそういうことを全く意識しないで見ていた。
この辺は上手かったと思うな。模型撮影と、CGと、上海でのロケの切り替えを意識させなかった。
「魍魎の匣」の有り得ない中国感と比べてしまったよ。あれは酷かった……

ただ、松たか子の邸はあまり“美味しく”なかった。あそこはもう少し気合を入れて
作れる部分かなー。まあそこまでは望みすぎかもしれないけど。

話の有り得なさは目をつぶる。ここは目くじらを立てる部分じゃない。
昼日中、毎日繁華街のビルをつっきって走って行く指名手配犯なんて、すぐ通報されて
捕まるやろ!とは言いたいが。せめて夜にするべきではなかったのか……
でもまあ、あのスタントの人の素晴らしさをたっぷり見られて良かったけどね。

うん。今回のこの映画で一番儲けものだったのは、壁上りのスタントシーンかもしれないな。
見てて「おお」と思った。楽しかった。
この作品はアクションもけっこうがんばっていた。一部スタント、CGはあっても、
本人たちも十分やってましたよ。さすがに中国映画ほど過酷ではなかったけど。お疲れ様。

だがしかし、
「カリオストロかい!」
「バットマンかい!」
と言いたくなる部分は、あれはやっぱりわざとなんだろうかね?
パロディ部分は、他にもあった気がするな。
「カリオストロかい!」の方は嫌いじゃなかったけど、
「バットマンかい!」の方はちょっとヤだった。ラストシーンですからね。
それをパロディでやられても……
ところで「良家の子女のたしなみですわ!」とか言う台詞は、どこかに明確な出典は
あるのかな?あちこちで定番のギャグ的に使われているけど、
元々が何かの台詞から来てるっぽい気がして……

いいところはいっぱいあったけど、根本的にノレなかったという大変もったいない映画。
パート2があったら見に行くけど、それでもノレないことは予想出来ているような気がする。

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