この作家はこの数か月で10冊程度読んだ。が、「あまり好きではない」が結論。
北村薫と同じカテゴリで語られることが多い気がするので、まあとにかく読んでみたんだけれど、
感触は全く違いますな。北村薫のふわりと優しい感じに比べて、じとっと冷たく湿ったイメージ。
わたしはこういうカワイソウな人たちの話はどうも……
あ、読んだのはデビュー作と梨園シリーズと、モップシリーズと本作。
もっと読めばカワイイのもあるのかな?
モップはまあまあ可愛いが……。でも梨園シリーズが病んだ人たちの話でねえ。
わたしは病んだ人たちが絡むミステリは嫌いなんだよ。
欠点というべきか。それとも自分の好悪の問題なのかは微妙なライン上だと思うが、
この人はどうしても筋にどんでんを入れたいらしい。
そこがいい、という人もいるかもしれない。でもわたしは、彼女がどんでんを追及することで、
登場人物の人間性や常識に無理が出てきてしまうのがイヤ。
けっこうそれがいつもだから。
「人間は大なり小なり怪物なのだ」
そういうことが言いたくて書いた確信犯なら、そりゃまあ仕方がない。
わたしが読みたいのはそういう話ではないと答えるだけだ。
しかし、作者がそんなことを言おうと考えてないのにこうなっているとすれば、
「骨の為に肉づきをおかしくした」と言われても仕方ないと思う。
仕掛けマニアはこれだから……と言いたくなるぞ。
本作について言えば、石尾が選んだ方法は無理があるだろ……
そんなことをすればどうなるか、というのはベテランなんだからわかっていなきゃ
いけないはずだし。結果を承知でそこまで望むとすれば、もう彼は狂気だよ。
結果がわからないほど石尾はアホではあるまい、と思ってしまえば作品世界には入れない。
なんにせよ、石尾の書き込みが浅い。もー、どんでんに気をとられてばっかいるからー。
それにね。主人公は香乃に何も知らせてやらなくていいのか?
そりゃ現実だとしたら、なかなか言えないことではあるけど……
でも知らせてやらないと。そういうことをする奴だってこと。
わたしだったら、あのままでは寝ざめが悪い。心配症なので、いつか何かが起こるんじゃないかと
ドキドキするぞ。それを知らせてやらないアイツは、自分のことしか見えてない
まことに自分勝手な人間ではないかと……
そこまで考えが及ばないとすれば、それは近藤史恵の未熟だと思うが、どうか。
仕掛け部分は、目を半眼にしてまあまあまあ……くらいの評価。
が、全体を見た場合、わたしは畸形的な話に思える。ちょっとね。
でも本作は、今まで全くなじみがなかった自転車ロードレースについての知識を得られたから。
その部分は興味深く読んだ。レースの駆け引き、あるいは暗黙のルール、という部分が
完全にクリアな理解に達したか、というとそうでもないけど。
好きなんかな?作者は。好きなんだろうね、自転車ロードレース。
この人の中で、モップシリーズはわりと好きな方だったんだけど、
なんで!?っていうくらいバランスが悪い話があったりするしなあ。
妹を殺してしまう話になっちゃダメだろう。あれってそういうシリーズじゃないでしょ?
ここはゼッタイ「死んだと思ってた妹は実は生きてました~」ってことになると思ってたのに。
……ならない。
この辺が激しく疑問。わたしは切ない話は嫌いじゃないけど、カワイソウな話はイヤなんだよ。
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