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◇ ローレンス・ブロック「泥棒バーニィシリーズ」

と言っても、3冊しか読んでない。
「泥棒は選べない」「泥棒はクロゼットの中」「泥棒は詩を口ずさむ」。
シリーズ全部で10冊内外あると思うが……これで終わりにしようと思っている。

だってマンネリなんだもん。
主人公であるバーニィのキャラクターはいいんだけどね。
気のいい奴で。泥棒紳士というほど気取ってなくて、女の子にもそこそこもてる。
一人称の話だし、着ている服についての言及はあっても外見についての描写は
(たしか)ほぼないから、実際にどんな人物を描くべきなのかはわからないが、
さっぱりした雰囲気の、笑顔の人懐こい青年(中年?30代半ば~後半だろう)なんだと思う。
が、10冊読み続けるのに“主人公がいい奴”ってだけじゃなあ。

こそ泥というか、鍵を開けるのが得意な泥棒。
空き巣狙いよりはもうちょっと上のランクか。彼はおおむね獲物を狙い定めて頂戴する。
彼の得意はコイン。他にも目についたものがあったら別に拒まないらしいけど、
手当たり次第何でも、という品のなさはない。
コージーミステリ好きのわたしにはわりあい向きそうな話だと思って読んだのだけど、
1作目2作目3作目と、ほとんど同じ話じゃ食傷しますよ。

泥棒のオシゴトに行った先で、いつも死体に出くわしてしまう。
で、――ここが問題――たいてい彼が犯人と目され、逃げ回り、友達の家に隠れ、
そしてがんばって探し回りうろつきまわり、真相を解明してしまう。

これなあ。もうちょっと目先を変える必要があるのではないか。
いつもいつも犯人だと思われるような状況になってしまうのは……
基本的に罠にはめられているのだからそういう状況に陥ってしまうのは仕方ない。
しかし毎回罠にはまってしまうのはアホではないのか。

バーニィにはレイ・カーシュマンという名前の巡査の知り合いがいる。
彼は“金で買える最良のお巡り”――バーニィが泥棒だってことを知ってて、
金のやりとりによって色々便宜をはかったりしている。
わたしは彼のことがとても不満なのだ。
3作とも、バーニィは殺人犯だと思われ、アジト(というより普通のアパート)は
封鎖されるわ金はないわ、友人の所に転がり込んで、そこを拠点に捜査するわけだけど。
その捜査の過程でレイに連絡を取り、情報をもらったり頼みごとをしたりする。
が、このレイがね。3回が3回ともバーニィが殺したって思いこんでるの。

いくら泥棒と巡査とは言え。つまり肝胆相照らす仲とは言えないとは言え、
バーニィがそれほど何度も殺人犯に目されてしまうのはおかしいと思わないのか。
だったら、レイがバーニィに「なんだ、またはめられたのか。
そりゃもちろん俺はお前が人を殺すわけはないって知っているけどな。
でもこの状況じゃ仕方ない、諦めて自首しろよ、バーニィ」
という言い方の方がアホくさくない。

それより、レイのキャラクターをもっと面白くして、バーニィ&レイの話にした方が良かった。
その方が面白くないか。事件解決の手助けでいつも女性が登場するけど(女性キャラも必要だが)、
恋仲になってもその1冊のみの関係だから。次の巻では別れたことになってるし。

バーニィは事件の度ごとに指名手配され、ラジオで名前を連呼されているが、
過去2回の真犯人が彼じゃなかったんだから、3度目もどうなの、と疑問に思わないのか、
ニューヨーク市民よ。「あれ、こいつまた殺人犯?」と思わないか。

バーニィが本名を堂々と電話帳に載せているのもどうかと思うよなあ。
彼の職業では有り得べからざることのような気がするが……

……ここまで長々と書くほどの作品じゃなかったはずだけど、何だか長くなったな。
いやまあとにかくマンネリだと。3冊で止めにする。
ローレンス・ブロックは他に2シリーズ、短編もあるから、一応そっちにも手をつけてみる。

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台詞回しの軽妙さ、そこそこ意外な犯人、キャラクターの爽やかさと、長所もあるんだけどね。
読み続けるか止めるか微妙な線だが、迷うくらいなら止めようと。
わたしの課題図書はただでさえ山となっているのだ。

※※※※※※※※※※※※

ところでねえ。

わたしは現在、「読んだ本の感想」として書きたくなるものしか書いてない。
そして書きたくなるものというのは、

1.すごく良かったもの
2.ヘタレなもの

のいずれかの場合が多いようだ。しかも出現率で言ったら1より2の方がどうしたって多くなる。
さらにそういう状況だと、1でも2でもない、
「語りたくなるほどのことはないけど、読んでそこそこ面白かった本」については
まったく触れることはないのですな。

前々から、2をブログに書く意味があるのか?とは思っていた。
自分が書きたいから書くんだけどね。王様の耳はロバの耳的に。
が、せっかく他人様の目に触れるものなんだから、もう少しプラスの役割を負った方が、
ヨノタメヒトノタメになるのではないかと。
「面白かった」という感想を読めば、口を極めてののしっている感想を読むよりは
その作品を読む気になるでしょう?
何せ、「非読は人非人なるべし」宣言しちゃったからね。及ばずながら、
せめて1冊、せめて2冊、読んでもらえる本を紹介するべきだろう。

なので、今後は「まあまあ」「そこそこ」レベルの本も、なるべく挙げるようにする。
せめてタイトルだけでも。
わたしはダラダラ長文派なので、山椒は小粒でピリリと辛いというような
締まった感想は書けない。数行の感想なんて自分で書いてて面白くないし。
なので、一言二言程度にはなるだろうが、おまけとして挙げるよう努力する。
(が、もちろんメインは「書きたいことを書きたいように書く」で変わらん。)

というわけで早速。

ピーター・ラヴゼイの「ピーター・ダイヤモンド警部シリーズ」は面白かったよ。
第1作の「最後の刑事」はあまり感心しなかったのだが。
ピーター・ダイヤモンド、最初はふてぶてしいだけのおっさんだからね。
でも2作目以降はけっこう楽しく読んだ。わりあい謎解き部分がやってくれる感じ。
何作目かで、えー、そんなんありかー(T_T)、と大層ショックな展開になりますが。
そこを除けば、わりと気に入っている。
舞台がイギリスのバースだし……。

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邦訳があるシリーズ作品は全部読んでしまったけど、いつか新作出るかな?
ちなみに、この作家の「殿下シリーズ」はまどろっこしくてダメ、
「クリッブ&サッカレイシリーズ」は時代小説なんだけど取り上げるテーマに
興味が持てなくて数冊でやめた。

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