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NHK「私の1冊 日本の100冊」

「また本ばかり読んでッ!」
と、裂帛の気合で怒られ、叩かれ続けた幼少時代を送ったわたしは、
他人に「本読んでスゴイねー」「エライねー」と言われるとどんな顔をしていいかわからない。
「いや、別にスゴイってことは……」モゴモゴ。
だって単なる趣味の一つだし。ドライブや食べ歩きと同じだよ。
ドライブや食べ歩きがエライってことにはならないでしょう?

しかし心の奥底では、「本を読むこと」にそこはかとない優越感がある。
どこから来ている優越感なのかはわからないが。知性に対してってこと?
まあ読書=知性ではないのは、近頃流行り(らしい)ケータイ小説とか、アレとかコレで
すでに証明済み。(つーか、ケータイ小説って読書か!?ムカムカ。)
だいたい自分のラインナップを見たって、これで知性とは正直言いにくい。

結局、読書なんて単なる趣味の一つでさ。エライもエラクナイもない。
好きな奴は読めばいいんだし、興味無い奴は別に読まんでいい。
多様な選択肢の中の一つ。読書なんてそんなもん。別に大層なもんじゃない。

……と、ずっと思おうとして来たのだが。そしてそう思っていると自分で信じていたのだが。

しかし、こないだ

『私の1冊 日本の100冊 スペシャル』

エラー - NHK

を見て思った。――ダメだ!やっぱり本を読まなきゃダメだああああああっ!

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この番組の中で、「普段本を読まない人に本を読ませよう」という企画があったんだよ。
そこでの本を読まない人の発言を聞いていると、ふつふつと怒りが煮えたぎってねえ。
「字を読むのがめんどくさい」って何!?のーみそついてんのかっ!と
罵倒したくなって困った。髪を(精神的に)かきむしる。

いかんな。深呼吸深呼吸。
読書なんて趣味の一つ趣味の一つ。読まないのも読むのも自由自由。
……呪文のように呟いても、やぱり心の底に潜む怒り。

正直に言おう。つまりわたしの本心は、

本を読まない奴は人として認めん!

なのだ。

偏見だと、差別だと、言わば言え。
人は本を読むべきなんだ。読め!読め!読みまくれ!

人間の生涯で実際に経験出来ることはあまりにも少ない。
経験のみによる味わえること、知ること、感じることはあまりにも狭い範囲に留まる。

でも。文字は魔法なんだよ。
文字は時を超える。文字は空間を超える。
どんなに遠くの人とでも。――名前も知らない、はるか過去の人とでも。
一方通行だとしても、文字を読むだけで簡単に繋がれるんだよ。

1000人の友達を作り、彼らと腹を割って話し込むのはそう簡単なことじゃないけど、
1000冊の本を読み、その本にみっしりと詰まった思いに触れるのは簡単?なこと。
いつでも確かで。必要な時にはそこにあって。1日5分だけの付き合いでも怒らないし、
何日も音沙汰なしでもフォローはいらない。なんとアリガタい存在であることか。

本を読まない人の発言を見て思った。読む人と読まない人の間には、わたしが思おうと
していたよりはもっと深い深い断絶があるかもしれないと。

本を読みなれるということは、別な視点を獲得することに役立つ。
1冊(まともな本を)読むごとに一歩、元の自分から離れられる。
10冊読めば10歩離れられる。
物事を見るのに、東側の一方からだけしか眺められないよりは、
北側からも眺められた方が客観的に判断できる。
一方から眺めただけだと、ラグビーボールが真球形に見えてしまう可能性もあるんだから。

本を友とすることは人生を豊かにするよ。読書が良質な人格を涵養――す、すすすすするとは
わが身を顧みて思えないけどさ。

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ところで、まったく本を読んだことない人にベテラン店員さんが薦めたのは何だっけ?
司馬遼太郎じゃなかったか?……わたしはそれは無謀だと思ったよ。
字を読む習慣がない人が、司馬遼太郎の厚さと詰まり具合に手を出すと思うのかね。無理無理。
……薦めたくなる気持ちはよくわかるんだけどね。
ああいう安っぽい実用書よりも、司馬遼太郎を読め!と店員さんは言いたいだろう。
そりゃもちろん言いたいだろう。よくわかる。
が、無理なんだよ。それはここ10年全く運動をして来なかった人に、
突然10キロマラソンに出ろと言うくらい無謀なことだ。

本を読まない人を本好きに。……それは余計な御世話だと思うんだけど。
だが、世の本読みはそれを願っている気がする。そんなことないですか?わたしはそうですが。
だから、人に本を貸すとかもかなり好き。とりあえず読んで、それで本読みになってくれたら
大層幸せ。自分に得になるわけじゃないけれども。

でもこの精神状態って、ものすごく似てるよね?……布教に。
なので、あまり一所懸命にならないようにセーブするようにはしています。
たかが読書。趣味の一つ。それだけのこと。神格化するんじゃない。読書は万能ではない。
呟く呟く。あまりにも崇め奉るのは間違っている。

ああ。しかしココロの葛藤が。読書を神としたい情熱のワタシと、単なる趣味の一つであると
言わざるを得ない理性のワタシ。ううう。苦しい。

まあどうでもいいんだけどね。ワタシのこんな葛藤は。
でも言いたいよ。やっぱり言いたい。こそっと言う。

読書って、本当にいいもんなんです。

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