PR

< パコと魔法の絵本 >

いやー……もう何というかねー……

面白かった?と訊かれて面白かったと答えるのに躊躇するような。
見た方がいい?と訊かれたら見た方がいいよと答えるけど。

面白かったという言葉は似合わない気がする。面白い、というのは対象を自分から距離を
置いて評価する時に使うような言葉だと思うから、もちろんけなし言葉じゃないけど、
「面白かった」は単に「面白かった」時にも使う言葉だからね。
この映画はもっと自分の側にひきつけておきたい。

「下妻物語」はテレビで見た。面白かった。癖が強いなーとは思ったけど。
「嫌われ松子の一生」は多分もっと癖が強いんだろうなと思って見ていない。
とりあえず見る予定はない。
で、本作品。ファンタジーであるらしいので、癖はあってもわたしにも大丈夫な方向へ
行ってくれるだろうと……

この監督、ファンタジーいいかもねえ。毒は相変わらずあるんだけど、
さすがに中毒するほどの量はないから安心だというか。
色彩感覚もむしろファンタジー向きだ。このこってりした色づかい。
「下妻物語」もある意味ファンタジーだけど、現実が舞台なので、セーブしなければ
ならない部分はある。だが「パコと魔法の絵本」だと心ゆくまで色で遊べるじゃないですか。
冒頭シーンから、もう何でもやってくれって感じだったよ。

内容もこてこてに盛りだくさんな感じ。何と言ってもキャラクターの作り方がすごいよ。
ツマブキ、ドコ?コイケエイコ、ドコ?って感じだった。
(小池栄子は消去法でアレしかないけど)
そして国村隼………………………………(絶句)。
外見的に、そうだと思ってみると実に国村隼なんだけど、しばらく気付かなかった。
全然照れも、無理も感じさせないオカマ。役をやらされている感が全くない。
不器用っぽい人かと思っていたが。やっぱり役者なんだねえ。はー……。感嘆。

アヤカ・ウィルソンは天使でしたな。
容貌的に文句のつけようがない。演技は……まあ、おいといて。
役柄的に難しいというほどではなかったのが幸いしたな。その範囲内において健闘していた。

役所広司もいつもの役所広司とは全く違った役だったしね。
あれもある意味挑戦ですよね。なかなか見られませんよ、あんなマッドサイエンティスト髪型。
国際派俳優になりかけて、まだこんな挑戦をする。いい役者だ。
何でもやってやろうという役者には好感を持つ。

そういう意味で、妻夫木聡にも好感を持っている。
外見的には、あるいは演技的にはそれほど好きじゃないんだけど……彼の役柄選びがエライ。
ちゃんと役者になろうとしている。美味しい役ばっかり選んでいるわけではなく、
脇も(今回も脇だ)数をこなしている。正直、まだそんなに上手いなあと思ったことは
ないけれども、これを繰り返していけば、きっといい役者さんになれるよ。
アイドルにならずに役者になろうとしているところに好感が持てるんだ。

監督は「下妻物語」でもアニメを使いこなしていたけど、
今回のCG(VFXと言えって?)も上手かったなー。
異種手法を上手く使えるのって財産だ。そのせいで多少キワモノ化が進むんだけど……
この監督は正統的に評価されることにはきっと執着がないでしょうから、気にしないだろうね。

別に教訓があったわけでも、話として素晴らしいわけでもないが、実に楽しめた。
このくらいしっかり作ってあれば人生の2時間を割いて後悔はしないよ。
嬉しいな。一所懸命作ってる人がまだいるんだ、と思えるから。ありがとう、と言いたい。
次もこの程度毒で作ってくれるとわたしも見に行けるから、このくらいで作って欲しいです。

コメント