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◆ 暖簾。(NHK「美の壺」より)

美の壺は欠かさず見ているんだけど、先日、久々にひっかかった作品があった。
山崎晴子デザインの朝顔の暖簾。

エラー - NHK

見た途端、「ほほー……」と声が出る。
写真が暗いので、あまりパッとしてないけれど、番組ではもっと鮮やかに映っていた。
暖簾+朝顔=コレ、か……やってくれるね。

和物は伝統がある分、意識的にしろ無意識にしろ、新しい方向へ踏み出すのは
なかなか難しいものではないかと思う。
「こういうもの」というラインが、我々の中にはすでにあるわけじゃないですか。
本人がそのラインの外に出るかどうかがまず一点。
受け手がそのライン外を受け取れるかがさらに一点。
本人はどうあれ、受け手がついてきてくれないと、少なくとも商品にはならないわけだし。

この朝顔は、ちょっとラインから逸脱していて、それがいい。
ひまわりなら驚かない。が、「大きい」というイメージのない、むしろ可憐さが売りの朝顔を
画面いっぱいに描くその根性が気に入った。人によってはもしかしたら朝顔だと
気づかないんじゃないかというくらい単純化して描いている。
なぜだか「日本昔ばなし」を思い出した。いいね。

「日の出」は、これとほぼ同じ図柄で現代アートの人が、たしか「EN」というタイトルで……
制作していた。タイトルもうろ覚えで作者名も忘れたが、宮城県美術館所蔵。
……ここでぼそっと言わせてもらえば、発想だけの作品は、その発想が同じであれば
同じものになってしまうからやっぱりつまらないんだよ。
どちらかといえばわたしは現代アートの「EN」(仮名)より、暖簾の「日の出」の肩を持つね。
赤い円環を描いて「日の出」と名付ければ芸になるが、白黒で円環を描いて「EN」と
名付けても芸にはならん。(制作者が芸を意図していたとは思わないが)

雷の暖簾も面白いじゃないですか。
雷をデザインすること自体も面白いし、その使い方も面白い。
暖簾なんて元はといえば麻とかの単なる布で、
描いた人だって別に神主さんとか雨乞いをする人じゃないのに……
この辺が日本に沁みこんだアミニズムというか。好きだよ、こういう考え方は。

雪の暖簾も実は地味にライン外。突然見せられたら雪とわからないかもしれない。
雪があまりに大きかったりする。しかも雪に赤い部分があったりする。
ラインからの逸脱も、このくらいユーモラスなら歓迎するよ。
ひらひらした暖簾に、実に似会った洒脱ぶりだと思う。そしてそこはかとなく品も良い。

ああ、なんかべた褒めだ。でももし売ってたら欲しいと思うくらい気に入ったことは確か。
が、一般家庭には相応しくない暖簾だろうな、これは。この店構えに掛けるからこそ映える。

ちょっと応援したいな。本間晴子。

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